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ゲームの話

「じゃんけんぽん!」
 リンとレンは元気よく声を上げ、勢いよく互いに手を出した。
「……負けたー」
 うなだれたのは、リンの方だった。
「勝ったー! じゃあ僕騎士ね! リンは司教!」
 レンは嬉しそうに言うと、ゲームのコントローラーを握って、ささっと操作をした。
 今やろうとしているロールプレイングゲームのパーティーには、騎士と司教の二人がいる。ゲーム機にはコントローラーを二人分接続することができ、パーティーにいる二人までなら操作ができる。その二人のどちらを操作するのか、という話になり、じゃんけんで決めることになった。
 騎士はいわゆるアタッカー、敵に攻撃をする役割で、司教はヒーラー、味方の体力を回復する役割である。気楽にできるのはアタッカーだし、二人とも騎士の方をやりたかったのだが、結果としては、リンがヒーラーをやることになった。
「……ま、レンには細かな気配りとかできなさそうだから、仕方ないからヒーラーをやってさしあげますよ」
 リンは自分もコントローラーを持ちながら、わざとらしく言う。レンはむっとした。
「なにー! できるしそれぐらい!」
「じゃあ代わる?」
「やだ。じゃんけんに勝ったのは僕だからね! あ、さては、どうしてもヒーラーをやりたくないのかなー? おやおやー?」
「うるさーい!」
 そんなやりとりをしつつ、二人はゲームをやり始めた。
 道中の雑魚敵については適当に倒し、早くも初めのボスらしきキャラに辿り着く。早く進めたいという気持ちが勝ったのもあり、大してレベル上げもしないうちに、そのボスキャラとの戦闘に入った。
 ……一分も経たないうちに、パーティーは全滅した。
「……」
 二人は言葉を失っていたが、目線を合わせた。
「リン! 回復間に合ってないよ!」
「その騎士が貧弱なんでしょ! ちゃんとやってるよ!」
「ほんとに回復に専念してた?」
「してた! ていうか回避全然できてないじゃん!」
「そこをフォローするのがヒーラーでしょ?」
「荷が重いよ! てか回避練習したら? 私が苦労しないようにって考えられないわけ?」
「そんなに言うならやってみてよ!」
「そっちこそ!」
 二人は激しく言い合ってから、お互いに、自分の持っていたコントローラーを相手に投げた。そして、戦闘に再挑戦する。
 違うキャラの操作に戸惑うのはなんとか乗り越える。しかし、結局はパーティー全滅に終わってしまった。二人はしばらく、操作キャラを何度も交換して、戦闘に挑み続けた。
「……できない……」
 回数を重ねまくった二人は共に、騎士と司教の両方の操作に慣れてきたが、それでもボスを倒すことができない。さすがに疲れた二人は、仰向けになって天井を見つめた。
 深くため息をついて、それから、ふとレンが呟いた。
「……相手が強すぎじゃない?」
 リンは、天井を見たまま答える。
「確かに」
 二人は体を起こして、全滅したパーティーの奥で堂々と立っているボスキャラを見つめた。余裕そうな、こちらを馬鹿にしたような表情をしたボスキャラが、延々と呼吸を繰り返して揺れている。リンもレンも、そのボスキャラを睨みつけた。
「こいつが強すぎなんだよ!」
「そーだそーだ!」
「腹立つ顔しやがって……ぜってー倒してやるからな! なあリン!」
「うん!」
 ボスキャラへの怒りで意気投合した二人は、思いつく限りの悪口雑言を吐きながら、戦闘を再開した。
 相変わらず勝てないのに戦闘を繰り返し、二人は大声で騒ぐ。そうしていると、部屋のドアがそっと開いた。
 二人がドアの方を見ると、そこにはミクが立っていた。――ものすごく、不機嫌そうな顔をしている。
「うるさい……物騒なこと叫ばないで……」
 リンもレンも、普段は優しいはずのミクの表情に、ただならぬものを感じ、背筋を伸ばした。
「ご、ごめんなさい……」
 二人揃って言うと、ミクはため息をついてドアを閉めた。
 画面にはまた、全滅したパーティーと、腹の立つ顔をしたボスキャラが映っている。
「……レベル上げしよう」
「そうだね……」
 二人は静かに言い合った。

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