会話#004「甘い」

#トリッカーさん視点

「ごめん、待った?」
「全然。私もちょうど来たところだよ」
「そっか、よかったー。 ……それで、どこ行こう?」
「君の好きなところならどこでもいいよ」
「僕だって、君の好きなところならどこでもいいよ」
「うーん……じゃあ、お言葉に甘えて」

「今日は……ほら」
「?」
「今日のためにパウンドケーキを焼いたんだ。……うまくできてると、いいんだけど」
「君が作るならどんなものだっておいしいよ!」
「ふふっ、ありがとう。味見はしたから大丈夫だと思うんだ……」
「……あのね、僕も実はクッキーを焼いてきたんだけど……もらって、くれる?」
「君ってお菓子も作れるの?」
「……男なのになんか、ごめん。
こういうのはやっぱり男が一方的にもらうべきだよね、
ああ、せっかく君がパウンドケーキをくれたのに」
「……いいんだよ? 今度家で一緒にお菓子作ろうよ。おうちデートだね」

「げほっ!!!!!!」
いけない、思わず……。執行部くんを起こしちゃうところだった。
何この激甘な夢。え、なにこれデート?
カップの底に溶け切ってない砂糖が残ってる紅茶ぐらい激甘。ああ。
途中のパウンドケーキとクッキーはおいしいと思ったけど、全体的に甘すぎ。
後で口直しをしないとなぁ……。
しかし、トラッドさんとのデートの夢とは、どこまで片思いが過ぎてるんだか。

朝、執行部くんは別に何事もなかったかのような顔で起きてきたわけだけど……。
毎日あんな夢を見ているのだろうか。だったら正直、ひくなぁ。
「あ、トリッカーくん。おはよ」
何でこんなこと考えてる時に声をかけてくるのかなぁこいつは!
「お、おはよう?」
顔見るとあの夢思い出しそうだ……普段はかたくるしそうなやつなのに。
「……なに? 僕の顔に何かついてる?」
「いや、なにも。今日も服が純白で僕にはまぶしかっただけ」