会話#016「告白」

#生徒会執行部さん視点

トラッドスクールさんはその雰囲気からして、僕の好みど真ん中で。
僕だって努力して生徒会に入ったつもりだけれど、
僕よりきっとしっかりしているし、
そこに立っているだけで周りの空気が輝いて見える。
少し張りつめた緊張感と美しさがそこにはある。

僕も生徒会の一員として、
周りに恥じない行動を心掛けてはきたつもりだ。
でも、それでも、彼女と僕は釣り合わない気がして、
僕なんてまだまだで、
でも、それでも、僕は彼女に近づきたいと思って。

……でも、全然、話しかけられない。

トラッドスクールさんはいつだって他の女の子たちに囲まれていて
その笑顔はもう見ているだけでいい気がするし。

本当に、見ているだけでいいのか?
いや、このままじゃ、一生話すことなんてできない。
男というもの、ここは、勇気を振り絞って、
当たって、砕けなきゃ!!!

「トラッドさん!!」
僕は一人でいるトラッドさんの名前を呼んだ。
トラッドさんが、振り返った。
ああ! もう、顔を見ることすらできそうにない!
でも!
「執行部くん?」
「あの! 僕! 君のことが好きです!!」
トラッドさんの声を聞くのすら恥ずかしくなって、
僕はトラッドさんの声を自分の声でかき消した。

っていうか!? 好きって? 僕何言ってんの!?

僕は意味が分からなくなって、走り出した。
遠く、できるだけ遠くに。

僕は全速力で走った後、
さっきまで自分が何をしていたのか分からなくなった。
告白なんて、してない。うん、あれは、したうちに入らないんだ。そうだ、そうだ……。

ああ、いい。もう、ずっと僕の、片思い!

(終)

#何一人で砕けてんだよ