#022
「あ、ホットプレートだ! これで色々焼けるね!」
僕に声をかけてきたと思ったら、
トリッカーくんは僕の前にあるホットプレートを見つけて、
目を輝かせ始めた。
「卵焼いていい?」
目を輝かせたまま、トリッカーくんが僕の顔を見て言ってきた。
「ああ、別に、僕に許可はいらないが……」
「やったねー!」
トリッカーくんが大喜びしているのを見ながら、僕はそっと後ろに下がった。
……トリッカーくんが目玉焼きを焼いているところを見てみよう。
楽しそうにトリッカーくんが目玉焼きを焼き始めた。
そして、へらを持って、裏返すところまできた。
目玉焼きは宙に浮いて、
裏返って、
見事に落ちてきた。
トリッカーくんが鼻歌を歌っているうちに、目玉焼きが完成した。
そして、トリッカーくんは焼けた目玉焼きを食べ始めた。
う、うまそー!!!
ほんとうに、おいしそうに食べてる……。幸せそうだ。
僕がその様子をずっと見ていると、
トリッカーくんは目玉焼きを食べ終わって、僕の方を見た。
「おいしかったー。
……あれ? イレイザーくんなにしてるの?」
「……」
僕の目玉焼き……どこいったのかな……。
「あー! イレイザーくんも卵焼く?」
「……ああ……うん」
さっきのは何かの間違いだろう。
まさか目玉焼きが突然なくなるなんて、ないない。
僕は2度目の挑戦をした。
別に、トリッカーくんと何も変わらない手順で。
さて、ひっくり返すところだ。
ここで、目玉焼きは、宙に浮いて、
……宙に浮いて、
「……」
ない。
僕は天井を見た。
そして、周りも。
「どこいったんだよおおお!!」
「!!!!」
僕が叫ぶと、トリッカーくんがびっくりして椅子から転げ落ちた。
「いったた……ど、どうしたの」
「僕の! 焼いてた! 目玉焼きが!!」
「……え?」
何で、二度目も……。