#生徒会執行部さん視点
「バボさーん!」
バボさんがリズムを取ってる。……気づかないかなぁ。
何か真剣そう。
遠くからじゃ聞こえないかもしれないな、と、僕はバボさんに近づいた。
「バボさん!」
「ふえ! はっ、はい!」
バボさんが気を付けの姿勢になって、僕の方を向いた。
「あ、ごめん、そんなにびしっとしてくれなくていいんだ……」
「執行部さんだったんですね……すみません、オリジナルさんかなと思っちゃって」
バボさんは、なぜかまだ緊張したような感じで言った。
「え、オリジナルさんにそんなびしっとしたことするの?」
「……いや、何ていうか。オリジナルさんはやっぱり、オリジナル、じゃないですか。
僕たちの中では一番偉いと思ってて」
「あー、なるほどねぇ。考えたことなかったな。
いつも楽しそうにバナナ配ってるから」
オリジナルさんのことを思い浮かべたけど、
誰にでもにこやかに接してるし、というか、
何も考えてなさそうに見えるというか……。
よく考えたら、僕たちの代表なんだよなぁ……。
「あ、それで、何か用……だった?」
少し緊張が解けたのか、バボさんは丁寧語をやめてくれた。
前に、あまりにも丁寧語が抜けないからやめてくれって言ってから、
ちょっとは意識してくれるようになったみたいだ。
「僕こそ何か邪魔したなら悪かったんだけど……
ていうか、すごくどうでもいいこと聞いていいかな」
「え?」
「バボさんってそのヘッドホンで何聞いてるの?」
バボさんがきょとんとした顔をした。
他にもヘッドホンしてる人っていっぱいいるんだけど、
僕はしていないから、どうも気になって仕方なくて……。
「僕は……ドラムのパターンを」
わからないかな、と、バボさんがヘッドホンを外して、僕に音を聞かせてくれた。
……こんなの聞いてるんだ。
でも、こういうの聞いて練習してるのかなぁ。すごいや。
「え、これっていつも聞いてるの?」
「普段は音は切ってるけど……周りの音聞こえなくなっちゃうし。
さっきはたまたま聞いてたんだけど、それで声かけられたの気付かなくって……ごめんなさい」
「あ、いや、僕こそ、こんな用で呼びとめちゃって、ごめんね」
そっか、やっぱり普段は音を切ってるんだ。
……でも、他の人は何を聞いてるのかなぁ?
あれをいつも耳に当ててて、よく周りの音が聞こえるなぁと思うけど、
……気になる、かも。
(終)
#他のヘッドホンしてるモジュールの話は……思いついたら……かな……