会話#036「ヘッドホン-2」

#スターマインさん視点

ダンス練習のために練習場を借り切っちゃったから、
今日はこの広い空間をひとりじめ。
……一人にはちょっと大きすぎるかなぁ?
ま、別に途中で誰かが入ってこないってこともないだろうけど。

音楽プレイヤーには新しい曲を入れてきたし、
早速それを流して、ヘッドホンで聞きながら、
僕は体を動かし始めることにした。
こういうのは、フィーリングでやるのも楽しいんだよね。
決まりきった振付を覚えるのも疲れちゃうし。

しばらくそうやって踊っていたら、やっぱり、誰か来た。
「あー、スターマイン!! なんだー、ここにいたのかぁ」
「レシーバー! どうしたのー」
誰かと思ったらレシーバーだった。
僕の一番親しい友達だ。
「今日は何して遊ぼうかなぁと思っててさ、思い浮かばないから、
スターマインのところ行こうかと思ったら、部屋にいないんだもん」
「ごめんねー、今日は何か踊りたい気分で」
「アクティブだなあ」
「新しい曲入れてきたからさ、なんかうずうずしちゃって」
レシーバーは何となくインドアな感じだからなぁ。
踊らせたり歌わせたりしたら、もちろんそれなりにはこなすから、
普段の見た目から判断するもんじゃないんだなぁとは思うけどね?

「あぁ、曲ってヘッドホンで聞いてるの?」
「うん」
「その辺にプレイヤー置いてスピーカーから流すんじゃないんだね」
「めんどくさかったからさー」
言われて気づいた。そっか、そういうのもありだったのか。
いつもヘッドホンしたままでいるから、気付かなかった。
……そう思って、レシーバーを見ていたら、僕はある疑問がわいた。

「レシーバーってさ、ヘッドホンいつも首にかけてるけど、
それって耳に当てたりしないの?」

僕は当ててる方が落ち着くからなーと思って言ったけど、
レシーバーはそれを聞くと、急におびえた顔になった。

「……い、いやだ。絶対耳に当てるとか無理だし」
「え? なんで?」
「いいよな、スターマインは。別にそれで好きな曲聞いてるとかだけでしょ」
「うん、そうだけど……レシーバーは違うの?」

レシーバーはそっと首にかけているヘッドホンを外すと、僕に差し出してきた。

「一回聞けば分かる」

レシーバーがこんな怖い顔してるの初めて見たけど、
僕は内容が気になって、自分のヘッドホンを一回外すと、
レシーバーのヘッドホンをそっと自分の耳に当てた。

「ね~え~? 聞いてる? レシーバー? 私だよ~。
今日こそはみかん100箱運んでくれるよね~? 待ってるよ~?」
「……」
「聞いてる~? ねえ、聞いてる? 聞こえてるよね~?
そうやって聞いたふりして何もしないからニートとか呼ばれるんだからね~?
わかった~?」

僕はそっとヘッドホンを外した。

「なにこれ」
「トランスミッター」

僕はレシーバーにヘッドホンを返した。

「こんなの直にずっと聞いてたら頭おかしくなるから」
「……そういう、ことね……」