※この話は(1)#038(2)#039のまとめです。
#038
#生徒会執行部さん視点
「じゃーん!!」
浴衣くんが大量のチケットを掲げた。
「温泉旅行のチケット!」
「すごーい!」
スターマインくんやレシーバーくん、スタエナくんが浴衣くんの周りを囲んで盛り上がっている。
「僕たちみんなの分あるから、ほら、
トリッカーくんも、扇舞くんも、
あ、鶴くんも鳳月くんも。
ほらほら、執行部くんも、バボさんも」
ちょっと離れたところでそれを聞いていた僕たちも、
浴衣くんに手招きされてチケットを覗き込んだ。
バボさんが自分の腕を見つめてちょっと困った顔になっている。
「バボさんどうしたの?」
「あ、執行部さん……」
「ひょっとして、腕のが刺青……とか……?」
「刺青じゃないけど……またこれ貼るの大変だなって、ちょっと……」
「なるほどねー」
びっくりした、落ちないのかと思った。
騒ぎに気付いたのか、アペンドさんやオリジナルさんも近くにやってきた。
「へぇ、温泉だって、いいね」
アペンドさんが言うと、オリジナルさんがなぜか首をぶんぶん横に振った。
「どうしたの」
「僕は、服、脱げない」
「……は?」
「絶対、絶対脱げない」
オリジナルさんの顔から、いつもの楽しそうな表情は微塵も感じられなかった。
「旅行は、いいけど、行きたい、けどさ……うん、行こう、
……じゃあ、ね」
オリジナルさんは妙に言葉を詰まらせながら、どこかへ行ってしまった。
僕たちはしばらくオリジナルさんの後ろ姿を見ていた。
「そんなに脱ぐの嫌なのかな」
「……気持ちは、分からないでもないけど」
鶴くんと鳳月くんが話してる。
僕たちは普段個人でお風呂に入るから、あまり気にしなかったけど、
人前で服を脱ぐのは抵抗があるのかもしれない。
まさかオリジナルさんがそこまで恥ずかしがり屋だとは思えないんだけど。
鳳月くんとバボさんのほうがよっぽど恥ずかしがり屋な気がする。
「アペンドさん、何でオリジナルさんあんなことを?」
「わかんない」
スターマインくんが聞くと、アペンドさんは即答した。
アペンドさんに分からないなんて、僕たちに分かる訳がない。
「……仮に、オリジナルさんが脱いだとするとさ……、
ボクサーくんみたいにしかならないんじゃないの?」
トリッカーくんが言って、僕たちはそれを想像した。
……たしかに。ボクサーくんしか頭に浮かばない。
「ああ、だから、見分けがつかなくなるのが嫌だっていうこと?」
扇舞くんが言うと、皆揃って納得した。
「僕も髪濡らしたらオリジナルさんと見分けつかなくなると思う……」
スターマインくんが言った。
僕たち、みんな同じ顔だからなー……。
この場にボクサーくんいないけど、見分けつかないだろうな。
というか、ボクサーくんっていつもいないような。
毎日バナナ配ってる時だって、オリジナルさんはいつも、
「ああ、ボクサーくん? 今日も泳ぎに行ってる」とか言ってた気がするし。