会話#054+「封印」 - 1/6

※この話は(1)#054(2)#055(3)#056(4)#057(5)#058(6)#059のまとめです。


#054

#アペンドさん視点

時間になってもあいつが来ない。
俺はオリジナルの部屋の前に来た。

皆、いつものバナナの時間になって、ぞろぞろと集まり始めたのに、
肝心のオリジナルが現れないので、
方々から「バナナ~……」なんて弱々しい声まで聞こえてきて、
さすがにその空気に耐えられなかったというのもあって、
俺は皆に「とりあえず様子を見てくるから待ってて」と言い残して来た。
まあ、俺も早く食べたいとは思ってるけど。

まさかこの時間に留守にしているはずもないので、
俺はドアをノックしたけど、返事がない。
こんな時間に寝ている……かもしれないので、
ドアを開けてみようとしたが、鍵がかかっている。

おかしいな。

「皆待ってるんだよ。俺も待てないし」
俺は拳を握りしめると、ドアを殴った。
ドアは倒れた。ああ、痛かった。

部屋の中を見回すと、部屋の隅の方にオリジナルが倒れるように座っていた。
何なんだ、調子でも悪いのか、と思って俺は近づいていって、
何かがおかしいことに気付いた。

オリジナルの髪の色が、なんだか少し暗く見える。
それに、服も、白いところが灰色になって見える。
何だか全体的に、黒っぽい。

「おい、オリジナル、どうしたんだよ」
俺が声をかけると、オリジナルは顔を上げて俺の方を見た。
「っていうか、何だよその色。大丈夫か」
更に言うと、オリジナルはゆっくりと立ち上がった。

「……ああ」
オリジナルは自分の姿を見て、ぽつりと言った。
「適合がうまくいかなかったか」
「は? 適合?」

「っていうか、君こそ何?」
何となく不機嫌そうな顔をして、オリジナルは言った。
「何って、お前いつもの時間になっても出てこないから……」
最悪バナナを配るのは俺でもいいだろう。部屋にもう今日の分が用意されているみたいだし。
「それよりお前、調子悪いんじゃないのか。
調子悪いなら寝てろよ」
俺が手を引こうと近づくと、オリジナルも近づいてきて、俺より先に俺の手を掴んだ。

「眠るのは君の方だよ」
制御される感覚が襲ってきて、俺はそこで意識を失った。