#生徒会執行部さん視点
「さて、団子を作るわけだけど」
僕は隣に立っている扇舞くんを見た。
何か不機嫌そうなんだよなあ……やりづらい。
最近、僕がお菓子を作るようになってから、
胡蝶さんが僕の作っているお菓子を食べに来るようになって、
それに扇舞くんが嫉妬したなどというので、
「それなら扇舞くんもお菓子を作ればいい」ということで、
こうして二人で団子を作ることになったわけだ。
でも、扇舞くんとしては、
やっぱり自分までお菓子を作るのは、どうも納得がいかないみたいで……。
「何で僕が……」
「胡蝶さんに喜んでほしくないの?」
「いやっ! 胡蝶のためならっ!」
胡蝶さんの名前出したら、急に目を輝かせた。
普段はあまり、こういう感情を見せる感じじゃないような気がしてたんだけどな。
「さ、最初は何すれば……いいの……」
扇舞くんは言葉を途切れさせながら、僕の顔を見た。
いざとなれば、普通に素直に聞いてくるじゃないか。
それなら僕も、ちゃんと尽くしてあげないとな。
「そうだなあ、服が汚れちゃうと困るし、エプロンでもつける?」
「そ、そうか……そうだよね……」
「ああ、あと、その手袋は外してもらわないとね」
「だ、だよね……」
扇舞くんは、普段付けている手袋を外して、ポケットにしまった。
手を洗ってから、僕たちは団子作りに取り掛かることにした。
扇舞くんも、僕も、団子は初めて作るし、
二人で作り方の手順を見て、戸惑いながらも、
何とかそれっぽいものを作っていった。
人と作るのは初めてだけど、
団子を丸めるときに「こんな感じかな」とかやるのは、結構新鮮だった。
いざ作り始めてみれば、
妙に強がっていた扇舞くんも、作業に打ち込んでるし、
やっぱり、普通に素直ないい奴なんじゃないか。
そして、ひとまず団子が完成した。
一応は胡蝶さんのため、と言っていたけど、
食べてもらう前に、まずは自分たちで味見をして、
それで大丈夫そうなら、更に作ってそれを渡そう、という話になった。
「いただきます」
一つずつ、作った団子を頬張る。
「……うん」
僕は、おいしいと思うけど、
扇舞くんのほうが、団子の味には詳しいとか言ってるし、
扇舞くんの意見を聞いてみないと。
「どう?」
ちょっと不安そうな顔で口を動かしている扇舞くんに聞く。
「……うん、悪くないかな」
「まずくない?」
「いいんじゃない」
ちょっと、扇舞くんは驚いているみたいだ。
「……なんか、達成感、あるね」
扇舞くんはぽつりと言った。
……そっか、自分で作るなんて、そうそうすることじゃないんだろうし、
この感覚は、初めてかもしれない。
「だよね」
僕はそう答えた。
この分なら、次に作る分も大丈夫かもしれない。
残りの団子に手をのばしながら、僕たちは次の材料に目をやっていた。
今度はそれで、胡蝶さんのために。