#生徒会執行部さん視点
「はーい、今日のバナナだよー」
といった感じで、今日もオリジナルさんがバナナを配る時間がやってきた。
僕たち「鏡音レン」のモジュールは揃ってバナナという果物が好きで、
もちろん「初音ミク」ならばネギが本能的に好きで、「鏡音リン」ならばみかんが本能的に好きという、
逃れられない運命だ。
中でもオリジナルさんとストレンさんのバナナに対する執着は恐ろしいものがあるけど、
そう滅多に目にするものでもない。
「ありがとー!」
ストレンさんが一番乗りで、かごから1本バナナを取って去っていく。
そして床に体操座りして、もぐもぐ。
「待ってましたー!」
「もらうねー」
今日も仲のいいスターマインさんとレシーバーさんが一緒にバナナを受け取り、
ふたりならんで食べ始める。
そんな感じで、全てのモジュールの元を回っていくオリジナルさんはすごく几帳面な人だなぁと思う。
本人は「みんなで仲良く食べたいよねー」なんて、すごく呑気な顔をして言っているんだけど。
「ほんと何も考えてなさそうな顔」
とアペンドさんは言っているけど、さらりとバナナを受け取っている。
「はいバボくん、どーぞ」
当然だが悪そうな雰囲気のバボさんにもバナナは配られる。
いつもマスクをしているバボさんは、声を出さずにうなずいてバナナを受け取った。
「……おい、バボさまがバナナ受け取ったぞ!」
「まじか!」
遠くの方でスターマインさんとレシーバーさんが、なぜかひそひそと言い出した。
この二人、バボさんのことをずっと怖い人だと思っているらしい。
「バボさまがバナナ……」
「バボさまって何か、ハバネロチップスとかの方が好きそうじゃない?」
「バボさまがそんなスナック菓子が好きなわけないだろ! あれだよ、高級洋菓子のなんちゃら~とかいうのが好きなんだよ!」
「えー! バボさまは優雅なのより、かっこいい感じの食べ物の方が好きに決まってる!」
なぜかこの二人は勝手にそういうことで盛り上がっている訳なのだが、
本人は迷惑に違いない。
「執行部くんも、どうぞ」
「あ、ありがとう」
僕も無事今日の分のバナナを受け取った。
オリジナルさんはまた次の人のところへと走っていく。
「やあ、バボさん」
ちょうどバナナを食べるためにマスクを外したバボさんに声をかけると、
バボさんはびくっとしてこっちへ振り返った。
「あ、別にバナナ食べるの邪魔しに来たわけじゃないから」
なぜか妙におびえた顔をしているバボさんにそう言うと、少し安心した顔になって小さくうなずいた。
とりあえずもくもくとバナナを食べた後、またマスクをつけようとするバボさんに、
「あれ、聞こえてたかな?」
と聞いてみると、また小さくうなずいた後に、
「ハバネロは……辛すぎるから……食べないかな」
と恥ずかしそうに言って、すぐにマスクをつけた。
「僕もあれは苦手だな。やっぱりバナナがいいよね」
僕がそう返すと、うん、とうなずく。
本当は全然怖い人じゃないんだけどな。