#レンアペンドさん視点
「はいっ、これ渡しといてくれって言われたから」
蘇芳さんが、山盛りのバナナが入ったかごを、藍鉄くんに渡した。
「何これ、重っ……!」
受け取った藍鉄くんがちょっとよろけた。
「私も段ボール一箱分みかんもらっちゃったから、
あとでみんなで食べようと思うんだけど。
すごい差し入れだよねぇ」
「そ、そう、だね……」
まだ藍鉄くんは重さのショックが抜けないのか、ちょっと声が疲れている。
しかし、あのかご、バナナの量に対してちょっと小さすぎるんじゃないだろうか……。
無理やり詰め込んだ感じがしてならない。実がつぶれてないといいんだけど。
多分藍鉄くんも、あとでみんなに分けようと思って、
おそらくだけど、毎日バナナを配ってるオリジナルのいるところを目指して歩きはじめた。
ちょっと……足が、よろけてるけど……。
「うわ……!」
案の定、バナナの重さで藍鉄くんは前によろけて、
かごは逆さま、バナナは盛大に散らばってしまった。
やっぱり、ここは運ぶのを手伝ってあげた方がいいか。
……オリジナルのところに行くのは、できれば避けたいけど。
「大丈夫?」
とりあえず1本拾って、藍鉄くんに声をかけてみる。
「あ、アペンドさん……だ、大丈夫です」
藍鉄くんはそう言ってから、すぐに下を向くと、バナナを拾い集めはじめた。
俺も、それを手伝う。
「どうしたの、この大量のバナナ」
「な、なんか、蘇芳と僕のファン? を名乗ってる人が、送ってくださったとか……。
蘇芳はそう言ってました」
「そうなんだ」
そんなファンがいるのか。すごいな。
「藍鉄ー!!!!!」
拾い始めて間もなく、ブルームーンくんが走ってきた。
「どうしたんだよ、これ」
「もらったんです……こんな量だから、とりあえずオリジナルさんに相談しようと思って……」
「こんな量運ぶの大変だっただろ。手伝うから、な」
「ありがとうございます」
ブルームーンくんも、散乱したバナナを拾い始めた。
ふと、ブルームーンくんが俺の方を見た。
「まさかお前に先を越されるなんてな」
「?」
「藍鉄のピンチに真っ先に駆けつけるのは俺のはずだったのに……」
そう言ってから、ちょっと舌打ちをして、また拾う作業に戻る。
たまたま、近くに居たからだけど……と言っても、この人が納得する様子が想像できないので、
俺は何も言わないでいた。