※この話は(1)#092(2)#093(3)#094のまとめです。
#生徒会執行部さん視点
#092
ぱーん!
……と、耳をつんざくような音がした。
気が付くと自分の部屋のドアが開いていて、
入り口にはオリジナルさんとアペンドさんがクラッカーを持って立っていた。
「……あの」
普通、ノックとか、するよね?
そう思いながら、僕は立ち上がって二人の方へ歩み寄った。
オリジナルさんはにこにこしているし、
アペンドさんはぼけーっとした顔で、クラッカーの紐を持ったまま僕の方を見ている。
「何ですか」
ああ、よく見ると床にリボンと紙吹雪まで散らばってる。
「おめでとうございます!
執行部くんが次の撮影のお仕事に行くことになりました!」
「おめでとーございます」
「……はあ」
「ちょっとテンション低いよー? 喜ぼうよ? ね?」
オリジナルさんが寄ってきて、僕の肩をぽんぽん叩いてきた。
「……いや、あの、光栄ですけど。
僕、前にもお仕事来ましたよね。そのときクラッカーまで持ち出してこなかったじゃないですか。
何でいきなりクラッカーまで鳴らして知らせに来たんですか」
久々のお仕事だけど、それにしても、こんな大がかりにやる必要はないと思う。
「え、めでたい時にはクラッカー鳴らした方がいいんじゃないの?」
アペンドさんが、不思議そうな顔で、僕の顔と、持っているクラッカーを見比べた。
「……」
何なんだこの人たち……。
オリジナルさんは会うたびハイテンションだし、
アペンドさんは会うたびに印象が違う気はするけど、でも、
何かもうちょっと、こう、真面目な人であってほしいって思うんだけど……
いや、本人は真面目なのかもしれないけど。
「めでたいのは間違いないと思いますけど。
あの、仕事っていうぐらいなら、詳細とかも伝えに来たんですよね?」
「わー、話が早い。さすが」
オリジナルさんは感心したような顔をしながら、ポケットの中を探って、紙を取り出した。
「えーと今回は、僕とリン、あとアペンドとリンのアペンド、……そして、
執行部くん、トラッドちゃん、以上6人3ペアでちょくちょく交代しながらの撮影、です」
「!?」
オリジナルさんの読み上げた名前に、僕はびっくりして、動けなくなった。
「今回は僕達の方でベースとピアノ、リン達の方ではギターとドラム、あとは何かてきとーに、ってことだから、
まあそうだね、とりあえず撮影に行ってから頑張ろうね! て感じだけど――」
さっき、トラッドさんの名前、言ったよね。
え、僕、トラッドさんと仕事するの?
「オリジナル、執行部くん話聞いてないよ」
「……想像通りの反応だけどね」
「ちょっとつっついとく?」
「うん、やってみて」
「うわー、ほっぺやわらかー」
「でも全然動かないね」
「……一応クラッカー、まだ持ってるけど。オリジナル、はい」
「ん、ありがと。せーの」
ぱーん!
僕は我に返った。うう、耳が痛い……。
「よかった、余分に持ってて」
アペンドさんが呆れた顔で僕を見て言った。
「何なんですか……」
「そっちこそ上の空になってるから。とにかく、トラッドちゃんと執行部くん、
一緒だからね! だから余計めでたいかなって思ってさ!」
オリジナルさんは紐を引いたクラッカーを軽く掲げた。
「……べ、別にそんな、特別めでたいなんてことじゃ……」
「そんなに顔を真っ赤にされたら説得力がないよ?」
「うう、うるさいです! ……」
結局、撮影自体は明後日から始まって、
当日の指示を待つ形になる、って話になった。