はい、というわけでね!
……なんて漫才のようなスタートを切るけど、
ついさっき、ぼ……お、オレ、の、モジュールが全部揃ったから、揃うまでの苦労を思い出そうかなって思うんだけど……。
一人で振り返るのも寂しいから、足しに相方を呼ぶことにした、よ。
「というわけでね、おなじみ僕がオリジナルで」
「俺がアペンド。……」
「……」
アペンドが僕の顔を見て、何となく何かを期待した目をしている。
めんどくさいけど、多分、つっこめ、ってことだろうか。
「なんで眼帯と翼つけてるの……」
「かっこいいでしょ」
「……」
散々眼帯が嫌だとか言ってた自分は忘れたんだろうか……。
「それに見てよこれ、今までになかったふかふか加減」
アペンドは背中の黒い翼を見せつけてきた。
「はいはい……」
僕が呆れていると、アペンドは僕に向き直った。
「別に自分からつけたんじゃない。ここに来る前に、エールダンジュさんがいて、突然渡されてつけられただけだ」
「渡された?」
「なんか、「あげるよ」とか言われて……。断れないままこの格好」
「断れなかったんだ……」
「なんかこう、威圧感っていうのかな。ミクオリジナルさんとかとは違う感じ……それがあってさ」
そうか、エールダンジュさんのエレメントはクール、だったっけ。それなら威圧感があるかもしれない。
「……で、そもそも、なんの話だっけ?」
アペンドが仕切り直す。そう。
「僕ら、「鏡音レン」のモジュールが揃うまでの話を振り返ろうって思ったんだよ」
「なんで?」
アペンドがきょとんとしている。わかってないなあ。
「ほら! 色々苦労したでしょ! それを振り返っていくわけだよ」
「お前は苦労してなくないか?」
「そんなことないよ! 僕だって色々……」
「お前は人に走り回らせてふんぞり返ってただろうが」
「あのねえ……君呼ぶのにまず苦労してんの。アペンドの癖になんで全然来ないの」
アペンドなんて今回に限らずそうなんだよ。前だって僕らがステージに何回も行かないと来なかったんだから。
「俺だって早く行こうとは思うんだよ、でもいつも鍵が多いっていうか……、色々……、あー! 俺のせいじゃないんだ! お前にはわかんないだろうけど!」
……僕はいつも最初からいるから、実際来るまでに何してるかって分かんないんだけど。
「その辺も含めて、とりあえず振り返ろうか」
「ああ」
というわけでね、……って最初の言葉に戻って。
「ところで」
アペンドが僕の顔を見た。
「お前、また「僕」って言ってるな」
……あっ……!
「オレにするって話だったよな」
「……い、いいでしょ、ここでぐらい僕って言ったって……」
「別に俺は困らないけど。人前では気を付けろよな」
「……」
アペンドと同じ言い方するの、なんとなく、むずむずするんだもん……もう、いいでしょ。