そういえば、僕自身の当面の目標は「各エレメントの仲間を集めること」だったけど、リン含め皆で目指しているのは、各エレメントのエリアのボルテージをためることだ。それをためれば、クリスタルが生まれる。そのクリスタルを集めて、皆でスペシャルライブをするんだ。
さっきの、パンキッシュくんが来てくれたステージのおかげで、クールエリアのボルテージがたまって、新しいクリスタルが生まれたみたいだ。
「きれーい」
生まれたクリスタルを、先にリンが見つけていたみたいで、僕は慌ててそこに行った。
「あっ、レン。ちょうどいいところに」
リンが僕を見つけると、手招きした。
「レンはとにかく、できるだけモジュールを集めたいんだよね?」
「うん。……って、別にリンもそれは変わらないんじゃないの?」
「それはそうなんだけどね。
それでさ、……新しいモジュールにも、当然来てほしいよね!」
「もちろんだよ! ……それが?」
リンはクリスタルを手にとって僕を見た。
「今このクールのクリスタルが手に入ったから……レンのクールエレメントの新しいモジュールが来てくれるステージができるんだって」
「ええっ、僕の?」
わあ、新しいモジュールかあ……わくわくするなあ。
「当然うまくやらないといけないよ。それに、使える曲はクールエリアの曲、呼ぶまではクールエレメントのモジュールじゃないとだめだけど」
「ってことは、僕が行っても駄目なのか」
僕はニュートラルだから……仕方ないね。
「そうそう。クールエレメントのモジュールは呼べたの?」
「ついさっきパンキッシュくんが来てくれたから、すぐにでもできるよ」
「そっか、なら、早速呼ぼうよ!」
「うん。ありがとね、リン!」
リンに言って、僕はすぐにパンキッシュくんを呼びに行った。
パンキッシュくん以外には待機してもらって、僕とパンキッシュくんで、特別なステージに向かった。クールエレメントの力を感じるそこでは、僕のクールっていう側面を見直せそうな気がした。かっこよさ、情熱……それを、より、表現できるようにならなきゃ。
さて、どの曲にしようか……と思っていたら、パンキッシュくんは僕の手を急に掴んで、空のきれいなステージを指差した。
「あそこにしよう」
「うん、いってらっしゃい」
僕は手を掴まれた意味がよく分からなくて、掴まれてない方の手で見送ろうと手を振ったけど、パンキッシュくんがむっとした顔をした。
「いってらっしゃいじゃねえよ、オリジナルも来るんだよ」
「へ? このステージはクールエレメントのモジュールじゃないと駄目なのに?」
「だからそれは俺で条件満たしてるだろ。ここでやる曲は二人要るんだ」
あ、ゲスト……みたいな? そういえばここ、そうだっけ……。後の方で少しだけ出るんだった。
「ってわけで」
僕は掴まれた手をそのまま引っ張られて、ステージの袖まで連れてこられた。ああ、僕が皆の代表なのに、これじゃあ立場逆転だ。
僕たちはそれぞれギターを持つと、立ち位置を確認するためにステージに上がった。
「オリジナル、昔、俺たちよく二人で同じステージにいたよな」
並んで立つ僕を横目に見て、パンキッシュくんが言った。
「ええ、そうだっけ」
「オリジナルが光、俺が闇みたいなポジションでさあ」
「そ、そんなことあったっけ……」
やけに大昔の話だ。あの頃はまだ未熟で、思い出すのも恥ずかしい……。
「なんだよ、忘れたのかよ。でも最近それもないよな。オリジナルには俺以外にもたくさん仲間が出来てさ……」
いつも皆の憧れの的になって、堂々としているパンキッシュくんには似合わない雰囲気で、そう言われる。
「僕に? 僕らに、でしょ」
オリジナルには、ってところがひっかかった。
「なんか違うのか?」
「その言い方じゃ、パンキッシュくんには仲間が居ないみたいだよ」
まさか、憧れの的だと、孤高の存在にでもなった気分なんだろうか。そういうのもちょっとはあるかもしれない。
「オリジナルが俺との共演のこと忘れる程度に、仲間が増えすぎたって言いたかったんだよ」
「わ、忘れてたわけじゃないよ。ただ、そんなに頻繁だったかなって思ったの。それに、パンキッシュくんが闇の僕なんて何かさあ……違うって」
何となくその設定、恥ずかしかったんだ。だから思い出したくなかったっていうか……。
「服の色の印象だろ」
パンキッシュくんは普通に受け入れてたみたいだけど、やっぱり闇とかいうのは違う。
「でも君も僕なんだよ」
「え?」
「いくら君がかっこよくても、恐くても、なんでも、どうせ僕なんだからね」
「それは何が言いたいんだ?」
「なんか、闇って悪者で排除される感じして嫌なんだよ。パンキッシュくんはそうじゃなくてちゃんと僕だ、っていうか、仲間っていうか……」
この話って、皆には何となく不思議がられてる気がしている。皆僕なんだよって言っても、……ぴんとくる話じゃないのかな。
「オリジナルはそれ、よく言うよな。君は僕だって」
パンキッシュくんがかすかに笑っている。
「分かってるよ。でもさあ」
パンキッシュくんがゆっくり僕に近づいてきた。
「『お前を闇に引きずり込んでやるよ』」
顔を近付けて、囁かれた。……と、鳥肌たった。
「……別にこういう俺がいても……オリジナルの言い方なら、こういうお前が、俺たちがいていいって話じゃないのか?」
「……び、びっくりしたぁ。そ、そうそう。そうだよ、そうだよね……」
パンキッシュくんは、分かってくれてるんだ。そうだ、どんな僕も僕なんだ。
ああいうの、さらっとやってのけちゃうあたりが、さすがなんだけどね。
そんな思い出話も終えて、いよいよ曲が始まった。このステージで、新しい仲間と、ついにご対面だ。
「さあ、出番だ!」
「おう!」
パンキッシュくんと交代したのは、青と赤の目が印象的な、青と黒の衣装を着こなしている僕だった。クールエレメントの新しいモジュール……。すごい。
曲が終わると、部屋で待機してもらっていたはずの皆も見に来ていた。
「ここでの新しい仲間、だよ」
「ライトニングストーンだ。よろしく」
彼……ライトニングストーンくんが言うと、皆は拍手で歓迎した。ほんとにクールエレメントを現したかのような雰囲気だ。
「こんなかっこいい後輩ができると落ち着かないな……」
パンキッシュくんが苦笑している。そんなこと言っちゃって、クールな大先輩の地位は簡単に揺らぐものでもないと思うんだけどね。
ついに新しい仲間とも出会えた。この勢いで、次の仲間も呼ばなきゃね。