一通り各エレメントの象徴モジュールを集めてからは、しばらくステージにはリンとか皆が行っていたから、僕らレンの出番はなかった。
そしてようやく回ってきた出番では、一筋縄ではいかないステージが待っていた……。
「心して挑んだ方がいいよ……」
新しい仲間を呼ぶためにずっとステージに立ち続けていたリンのアペンドは、へとへとになってそんなことを言っていた。
「どういうこと」
僕の方のアペンドは、僕らを代表して話を聞いていた。
「ステージで邪魔がどんどん増えてるの。なんとか今はできてるけど、お客さんを満足させるハードルがあがってる気もするし……」
「邪魔、か」
「あ、レンはあの邪魔なんとかできるんだっけ」
「まあ」
そういえばアペンドのスキル、ノルマブレイクは邪魔を叩きのめすとか言ってたっけ。
「レンの方も新しいモジュール集めながらステージもやるんでしょ。両方は大変かもね」
「そうかも。俺は新しい仲間呼ぶの得意じゃないから、当分はライトくんがリンみたいにステージに立ち続けることにはなってるけど」
「うまくいくといいね」
「そうだな」
そういえばリンのアペンドってあんな喋ることあるんだな……。こっちのアペンドもそういうことあるんだけど、言葉数が最低限というか、なに考えてるかわからないというか。僕がオリジナル同士で喋りすぎるから、比較してそう見えるのかもしれない。
「というわけだから、ちゃんとやっててもステージがうまくいかないことが増えてるらしい」
「へーえ」
アペンドがこれからステージに行くライトくんに説明して、ライトくんは何となく驚いたような顔をしている。
「ま、でも俺にステージは任せとけよな。絶対に仲間を連れて帰ってくるぜ!」
「がんばれ」
僕達は意気揚々とステージに向かうライトくんに手を振った。
「頼もしいな……」
アペンドが後ろ姿を見つめている。なんだか海賊みたいなイメージのライトくんは、人を連れ去るように仲間を呼んできそうな気もしないではない。
新しく割り振った部屋に戻って待っていると、ドアの開く音がした。
「余裕だぜ!」
ああ、ライトくんだ、と思って出迎えると、ライトくんはスターマインくんを連れて帰ってきていた。スターマインくんは首の後ろを掴まれた状態で、すっかり体から力が抜けて放心状態だ。
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
僕が駆け寄ると、我に返ったスターマインくんが僕の目を見て涙を浮かべた。
「この人誰ですか……」
「ライトくん名乗らなかったの?」
「えっ、ちゃんと名乗ったぞ。ライトニングストーンだ!」
「うっ……そうじゃなくて……」
すっかり怯えた様子のスターマインくんを座らせて、話を聞いてみることにした。
「だって、名乗るなり首掴まれて、ここまで引きずられてきたら、いくら名乗られても……。びっくりした……」
「早くここに連れてきた方がいいと思ったからな!」
「うん、ライトくんは使命感に溢れてたんだね。それとスターマインくんはお疲れ様」
満足げなライトくんと、涙目のスターマインくんは対照的すぎる。
「スターマインくん、ライトくんはこれから来てない皆をどんどん呼んでくれることになってるんだ」
「そ、そうなんだね……」
「でも初対面だと何がなんだかわかんないか……今度からまた僕もステージに付き添った方がいいかな」
「細かいこと説明するの苦手だから、それの方が助かるかもな」
ライトくんもちょっと反省したようで、僕にそう言った。
どたばたしてしまったから、ご飯休憩を挟んでから、改めてスターマインくんと話をした。
「そういえばスターマインくんの同期組はまだ来てないね。スターマインくんが初だ!」
「そうなんだ!」
怯えた様子から復帰したスターマインくんは、いつも通り元気になった。
キュートエレメントのスターマインくんは、やっぱり元気な方がそれっぽいよね。
「そっかぁ、そうなるとレシーバーもまだだし……他にも……」
「トランスミッターちゃんが「ニートまだ?」って聞いてきたし、早く呼ばなきゃとは思うんだけどね」
「はは、ニート……」
またニートなんて呼ばれてるのか、って思ってるみたい。
でも、スターマインくんはレシーバーくんとすごく仲がいいし、やっぱり早く来てほしいよね。
そんなことを話していると、ラディカルくんがやってきた。
「わー! 初めまして! ラディカルスターです!」
「は、はじめましてぇ……」
スターマインくんもやっぱり、アイドルのまぶしさにやられたようだ。
「またステージパフォーマンス上手そうな先輩が来て、僕嬉しいです! 弟子にしてください!」
「ええっ、弟子!?」
そういえばラディカルくん、前にアイドルっぽくて憧れ、って言いながらイレイザーくんを追っかけてたけど、スターマインくんなんて、ほんとに屋外ステージでライブするのが得意だから、ラディカルくんが追いかけるには絶好の相手だよね……。
「僕なんて全然! 大先輩のパンキッシュさんとか、後輩のイレイザーくんとか、他にもいっぱい……」
「謙遜しないでくださいよー! あ、でもパンキッシュさんもイレイザーさんも素敵ですよねー……さすが分かってらっしゃるー……」
「えへへ、分かるよね分かるよね!」
ラディカルくんは憧れの先輩を思い浮かべて、表情が輝いている。スターマインくんも、後輩に話しかけられて、ちょっと嬉しそうだ。
「弟子とかじゃなくて、今度一緒にダンスの練習とかしようよ」
「ほんとですか! 是非!」
ああ、よかった……。やっぱり皆、仲良くしてくれるのが一番だ。
「スターマインさんの同期ってどんな方がいるんですか?」
ラディカルくんが聞いてくる。さん付けされたスターマインくんはちょっと照れくさそうな顔で、僕の方をちらっと見た。とりあえず、僕が名前を挙げて、スターマインくんが説明することになった。
「同期だとスターマインくんと仲がいいレシーバーくんとか?」
「レシーバーは普段遊んでばっかりだけど、ステージに立つと化けるタイプかなー」
「他にも鶴くんとか鳳月くんとか」
「和服の人たちね。また僕たちとは違ったタイプだけど、二人とも楽器弾くし」
「執行部くんとか、バッドボーイくんとかもいるね」
「あの二人はね! すごいよ! なんか!」
「すごい?」
「まずバボさまがかっこいいの。で、執行部くんは真面目そうだけど、バボさまを手懐けてるからすごいの」
「……??」
「来たら分かるよ、お楽しみに!」
さすがに今の説明はどうなんだろう……というか、スターマインくんはいつまでバッドボーイくんのことを勘違いしてるんだろう。同期なのに……。本人は憧れの目線なんだろうから、いいとは思うんだけど。
「よくわかんないけど、楽しみにしてます!」
ラディカルくんもこれから来る先輩に会えるのが楽しみになったみたいだし、スターマインくんとも仲良くできそうだし、勘違いはさておき、大丈夫ってことにしておこう。