交差#21「頼りになる援軍」 - 1/3

※3話分まとめになっています


まだまだやらなければいけないステージが残っている中で、浮上した問題がある。

もしステージが成功しなかったら、その後どうするのか。
もしソロ曲じゃなかったとき、誰が一緒に出るのか。
もし新しい仲間が来なかったら、誰が来てくれるのか。

一つ目は、ライトくんがステージに立ってだめだったら、アペンドを呼ぶことにしている。
二つ目は、前は僕が一緒に出ることにした。
三つ目は、……一度あったけど、あのときは僕以外にも一緒に見てくれている人がいたから……。

そんなことを、共有スペースで、アペンドに相談していた。ライトくんも横で話を聞いてもらうことにした。
「失敗するたびにこっちに呼びに来るのもめんどくさいし、
もうアペンドはこれからずっと、ライトくんと一緒にステージに行くってことでどう?
今までは僕がお迎え役でずっと見てきたけど、
それは別にアペンドがやってもいいでしょ?」
「それは、言えてるな。……分かったよ」
よし、引き受けてくれた!
あとは、新しい仲間が来ないときだけど……。
「なあ、俺が部屋に戻ると、パンキッシュさんがさ、「もし誰も来なかったら俺を呼んでもいいんだぞ」って、毎回のように言ってくるんだけど」
ああ、パンキッシュくんはそうだよね、かなりステージに立ちたがってたし……。
「今のところ間に合ってるとは答えてるんだけど、他にもステージに立ちたい人っているのかなあ……」
「まあ、いるだろうな。いつもライトくんとオリジナルの帰りを部屋で待ってるなんてつまらない、と思ってる人もいるんじゃないか?」
ライトくんとアペンドに言われて、僕はうなずいた。
「もともと、僕ら二人だけでステージに行くなんて決まりを作ったつもりはないし、
初めの頃は来てる皆で次のステージを見守ってたんだし。
もっと皆ついてきてくれてもいいよね。
アペンドに関しては次から必ず来てもらうことにしたんだし、あとは皆に話してくるよ」
僕はそれぞれのエレメントの部屋に今の話を伝えてくることにして、ライトくんとアペンドには、先にステージに向かってもらうことにした。

「そういうことは早く言えよな」
そう言ってから笑ったのはパンキッシュくんだ。ライトくんの話を聞いたし、真っ先に声をかけにいってあげたら、この返事。
「いやあ、あまり大勢で常にステージを見てるのもどうかなって思っててさ……」
「それはそうだけどさ。ま、俺はライトの勇姿も見守りたいし、いつでも行くぜ」
先輩だなあ……と、僕は思った。
「おい、バボ、お前も行かないか?」
遠くでドラムスティックを回していたバッドボーイくんが呼ばれた。バッドボーイくんは慌てて回していたスティックをぱしっと握った。
こっちに背を向けているけど、きっと今顔はびびっているに違いない。
「ば、バッドボーイくんはドラムの練習で忙しそうだよ。僕は他の部屋でも一緒に行きたい人いないか聞いてくるからさあ、パンキッシュくんもついてきて」
僕はパンキッシュくんに言って部屋の外へ誘導した。パンキッシュくんはバッドボーイくんの方を名残惜しそうに見ていたけど、諦めたみたいで、僕の方へついてきた。
「俺もいなくなったらこの部屋バボだけだし、暇になったらついてこいよな。同じクールの仲間のこと見てやろうぜ?」
そう言い残して、部屋を出た。

今度はお隣のキュートエレメントの部屋だ。誰も来てくれなかったときにとっさに出てくれたエッジくんもいるし、声をかけた方がいいかもしれない。
部屋に入ると、大勢で僕を出迎えてくれた。皆仲がよさそうだなあ。
「もし誰かが来ないときに代役で続きをしてもらうかもしれないから、ステージに来てもらいたいんだけど……」
そう言うと、
「はい、是非……」
「行く! 超行く!」
「シロクマ行きまーす!」
若干控えめに言ったエッジくんの声をかき消して、水着くんとシロクマくんが前に出てきた。
シロクマくんは相変わらず売り込みが強いとして、水着くんはいつもいないくせに、こんなときだけ本気だしてくるなんて……。
「え、水着くんはちょっと……」
「この開放感満点の格好のよさがまだわからないかなー! ステージが僕を求めてる!」
何を言ってるんだ……と、僕が呆然としていると、横にいたパンキッシュくんもため息をついていた。
「ああ、もう、せっかく行きたいって言いかけた後輩が何も言えなくなってる」
スクジャくんがそう言って、エッジくんを見た。さらに、スターマインくんの背中を押した。スターマインくんは少しびっくりしてから、うなずいて前に出てきた。
「行きたそうだよね。僕はさぼりたいけど」
「じゃあやる気のないスクジャくんには留守番頼んで、皆で行こう!」
なぜか水着くんがリーダーを気取って、シロクマくん、エッジくん、スターマインくん、あとは、名乗り出てはなかったけど、やり取りを聞いてうなずいていた扇舞くんとラディカルくんも来てくれることになった。急に人数が増えたなあ……。

あとは、ニュートラルの部屋にアペンドもいなくなったから、一人取り残されていたイレイザーくんにも声をかけた。エッジくんも行くし、ついてきてくれることになった。
次にビューティエレメントの部屋を覗いてみたけど、全員が「気が向いたら後で行く」って感じだったから、とりあえず一緒には行かないことにした。

残りはカオスエレメントの部屋だけど……。
「最初はぐー、じゃんけんにゃー」
部屋のなかでは、トムくんと藍鉄くんが遊んでいた。
「うるさい……」
ストレンくんが、部屋の入り口で覗いていた僕に近づいてきた。
「ストレンくん、ステージ見に行きたいとか思わない?」
「えー、自分が立つ訳じゃなきゃそんなには」
あー、やっぱりそうなんだ、ストレンくんは。自分がステージに立ちたい方なんだよね。でも、新しい人が来なきゃステージに立てるかもしれないからね。
「もしかしたら誰も来なければ立つかもしれないよ」
「……それなら行こうかな、ここにいてもうるさいだけだし」
ストレンくんは遊んでいる二人を少し睨んでから、部屋の外に出てきた。