交差#33「長期待機」

僕達は目的のステージにやって来た。
扇舞くんの話だと、こっちの方のステージでずっと待ってるのがトリッカーくんらしい。
「同期の仲だし、ここは扇舞くんと鶴くんでステージに立とっか?」
「わかりました」
特に扇舞くんはまさにトリッカーくんの同期だし、仲良くしているみたいだし、呼ぶにはちょうどいいはずだ。鶴くんはこっちに来てすぐ、しばらく部屋に戻ってたから、それ以来ステージに立つ機会もなかったはずだし、これがいい機会だと思う。
そしていつも通りにアンカーはライトくん、ということで、ステージを始めることにした。

準備している三人の様子を、僕は見ていた。
「扇舞くんと一緒って、そういえばあまりないね」
鶴くんが言った。
「そういえば……そうかもしれない」
扇舞くんはそう呟いてから、ちょっとだけ嬉しそうな顔をした。
「まず僕からだね、行ってくる」
扇舞くんがステージに上がっていって、それを鶴くんとライトくんが見送った。
「仲良さそうだし、てっきりよく一緒にステージに立ってたんだと思った」
「案外そうでもないんだよね、仲良くても一緒にさせてもらえなかったりするし」
「へー」
「だから、こういうときって貴重かもね。ライトくんと僕でも、もしかしたら今後は一緒にここにいるとは限らないもんねえ」
二人はエレメントは同じだけれど、和服と洋服では一緒にってことは、たしかにあまりないのかもしれない。
「そうだなあ。……じゃ、今回は近くでしっかり拝見させてもらうよ、鶴先輩」
「……や、やだな、先輩とかやめて!」
鶴くんは大慌てで手を振って、ライトくんは笑っていた。……ほんとに、先輩になったよね。

そんなやりとりもあったけれど、交代のタイミングになると、舞台袖でトリッカーくんがかっこつけて立っていた。
「お、トリッカーさん?」
ライトくんが声をかける。名前は伝えてあったしね。
「ご名答。君は新入りかな」
「そうだな、はじめまして。自己紹介はまたあとで。それより続きを、まずは」
「はいはい。任せといて。あー待ちくたびれた!」
そう言うと、トリッカーくんは元気よくステージに上がっていった。

余裕の表情でトリッカーくんはステージを終えて、そして僕達の待っている方へやってきた。
「お疲れ様、待った……よね」
僕が聞くと、トリッカーくんが僕の方へ詰め寄ってきた。
「待った、超待った!」
「ご、ごめん、遅くなって……」
「ずっと来ないかと思った! あーお腹すいたー!」
そう言って地団駄を踏んでいる。
「相変わらず食い意地張ってるなあ」
鶴くんがこそっとつぶやいて、扇舞くんは苦笑いしている。
「ごめんね、もうすぐ皆集まるし、そしたら色々用意できるから。それまでは部屋のお菓子でもつまんでてね」
「お菓子!? 食べる!」
提案したらものすごく食いつかれた。……食べ尽くされそうだ。
でも、お腹が空くほど待たせたのは悪いし、一旦部屋に戻ることにした。