交差#37「コンクルージョン」

はい、というわけでね!

……って、また同じことを言うけど。
ざっと振り返って、僕たちはそんな風に集まっていったんだ。
「これでも僕が苦労してないって言う?」
振り返る前に、お前は苦労してない、とか言いやがったからね。苦労してるよねえ。ほぼ全員のお出迎えに走り回って……。
「それライトくん目の前にして言えるのか?」
アペンドは僕の方も見ずに言った。
「うっ、そっ、それは……」
「だよなあ?」
そして馬鹿にしたように笑う。あー、もう、ほんと腹立つ……。
「そういえばさ、なんでアペンドのくせに全然来ないのかって話、結局してないよね」
「お前がずっと話してたからな」
「ああっもう、すぐそーやって僕が悪いみたいな言い方してさあ! 話すならさっさと教えてよ!」
あーめんどくさ、って呟いたのはばっちり聞こえたけど、話はしてくれるみたいだ。
「お前がこっちに来るときにどうしてるか知らないけど、俺の場合でいえば、元々居たところから移動してくるときに、一旦よく分からない空間に閉じ込められるんだよな」
「よく分からない?」
「そこで、ずっと微かな音を聞いてる。その間、何か考えるってことすらなくて、何となくそこに自分がいるだけ」
「……」
なんか、思ったより、その間は何もしてない……というより、『何もできない』が正しいのかもしれない。
「聞こえてくる音って多分、ステージで聞こえる歌なんだ。だから早くここから出してくれって、思ってたかもしれないけど、そう思うことすら許されてないっていうか……何だろうな。求められない限り、出られないっていう感じか……」
「そんな、なんだ」
「……はー、だから面倒なんだよ。あそこにいる状態ほど無意味なものはないっていうか。他の皆もそんなかもしれないよね」
そういえば、来る前のことをはっきり覚えてない人もいたし、この話は共通なのかもしれない。
「ステージの袖でずっと待ってた人もいたけど、それはどうなんだろ」
「求められてるのがはっきりした人はもう来れたんじゃないのか。お前がずっと全員集めようとしてたわけだし」
「ふーん、そういうものなんだ……」
何にしても、僕にはきっと分からない世界だ。
「……つまりは、俺は必要とされてここに来れた……」
小さい声でアペンドはそう言ったけれど、なんだか自分に言い聞かせているみたいだった。
「とりあえず、全員集まれてよかったよ。バナナもたくさん食べたし」
僕の目標は達成できたから、あとはまたぽつぽつ、皆がステージに立ったり、撮影したり、そんな生活になりそうだ。
「俺は……食べたりない……」
アペンドはそう言いながら、すぐそこに置いていたバナナをひとつ掴んだ。……人格の分だけ必要なんて、相変わらず消費が痛すぎるよ。
目の前で食べられるのも悔しいから、僕もひとつ、バナナを手に取った。