交差#38「解禁されない世界」 - 4/4

一通りの記憶を流し込まれて、憶測もはっきりした。アルティメットくんは、俺達の世界とは違う世界の『オリジナル』で、あの邪魔を生み出していた存在は、その世界では『アペンド』だったということだ。俺がこの世界に来て、初めに閉じ込められるあの空間……あそこにあたる領域から、その『アペンド』は出ることができないまま、……。
「新しい環境に来るこのタイミングで、僕達がめったに立てなかったステージに立てるチャンスが来た。だから僕はあいつと一緒に来た……でも、あいつは、もうステージに立てないんだよ。君が消したから!」
アルティメットくんは声を荒らげた。確かに何があったかは分かったが、それでも、俺だって一方的に責められるのは納得がいかない。
「あんな状態になったやつをどうしろって言うんだよ!」
「どうする? 消さなきゃよかったんだよ」
「こっちだって仲間を危機に晒されたんだ、許せるわけないだろ」
全く、こっちの言うことは認める気がないようだ。俺が自分の仲間を守りたいのと同じで、こいつだって自分の仲間はかわいいんだ。
少しだけ黙ったアルティメットくんは、顔を下に向けた。それから、薄く笑みを浮かべた。
「……そうだよ。君達が消えてくれたら、僕達が代わりにステージに立てるのに。もしそうしたら、あいつだって直ったかもしれないのに……」
「……」
うつむいたそこから、目は俺を睨んでいる。
「僕はこの姿を手に入れてしまったけど、あいつを消したこと、これからずっと、恨み続けるよ。お前が、あいつの代わりなんてありえないから」
……本当に、どうしろって言うんだ。これからずっと、俺がその恨みを受け続ければ、こいつは満足なのか。
「俺は、ここの仲間を守るためなら力を尽くすだけだ。ステージだって何だって、俺にできることをこれからもする。邪魔するなら今後も容赦はしないから。いくらお前に恨まれようと」
……同情しない訳じゃない。でも、違う世界のことまで、俺の手に負えるわけがない。それに、俺達が消えることを期待しているようなら、やっぱり同情なんてしている場合じゃない。
「同じ立場の存在なのに情けもないんだね」
「何も思わなかったんじゃない。今更俺が同情したって、お前は許さないんだろ」
……他の世界のオリジナルでも、こんなに腹が立つ性格なのか。まだこっちのオリジナルの方がましかもしれない。
そうこうしている間に、部屋の外から話し声が聞こえてきた。……何だか、盛り上がってるみたいだけど。
俺達はしばらく言葉を交わさなかったが、アルティメットくんは何かを切り替えたかのように、表情を変えた。
「何だかにぎやかそうだね。この部屋に来るのかな?」
演技だろうが、穏やかに微笑んでくる。
「……お前はこっちのオリジナルのことはどう思うんだよ」
「同じ立場だったから親近感わいてるよ。君とは違ってね。きっと仲良くできそう。っていうか、仲良くなりたいな」
「……」
仲間としてここに来た以上は、アルティメットくんが敵意を示すのは、あくまでも俺だけなんだろう。今後、ここで一緒に過ごしていく中で、きっとオリジナルには、今回のことを直接伝えることはない。俺も、アルティメットくんも。オリジナルがこのことを知る可能性は、オリジナルの方針からしても、少ないに違いない。
アルティメットくんがどんな行動に出るかはまだ分からないし、これから、警戒していなければ。俺は改めて、そう決意した。