目が覚めると、9時半を過ぎていた。リンにしては早起きな方だ。夜更かしもしなかった。いっぱい練習したから、すぐ眠くなってしまったのだ。
自分の部屋を出て、洗面台に向かう途中に玄関を見る。レンの靴はないので、予定通り仕事に行ったということだ。朝6時……声を出しておきたい……思い出すだけで、震えてしまいそうな真面目さだ。
とりあえず、早めに朝ごはんを食べないと、昼ごはんの時間が近くなってしまう。適当に牛乳をコップに注いで、小さいロールパンを二つ皿に乗せる。
朝ごはんを食べつつ、リンは端末の画面を触る。昨日さんざん〈れな〉でタスクをやったから、もしかして今日はタスクが勝手に増えたりしているかもしれない。そんなことを考えながら〈れな〉を立ち上げてみる。
《おはようございます! 今日も一日頑張りましょうね》
しかし、予想に反して、タスクは一つも出ていなかった。
「……ほんと、よく分かんないなぁ」
別に、練習がしたくてたまらないわけではない。レンじゃあるまいし。……でも、それにしても、画面がシンプルすぎる。リンは画面を色々触ってみたが、メッセージが出たままで何も起きない。
タスクを急にやりたくなったら、どうすればいいのだろう? ……自主的にやればいいだけか。リンは頭の中で自問自答する。レンは、別に〈れな〉がなくても練習をしていたはずだし。
……例えばミク、ミクの〈れな〉はどんな感じなのだろうか。そうだ、そもそも〈れな〉を勧めてきたミクには、その後〈れな〉のことは聞いたことがなかった。
ごはんも食べ終わり、食器を片付ける。これからどうしようかな、とリンが思っていたそのとき、端末から大きな音が鳴った。
「欠黒象……!?」
リンはすぐに端末の通知を見る。少し離れた神社の辺りに欠黒象が出たらしい。リンはすぐに支度をして、家を飛び出した。