会話#005+「共演」 - 6/6

#015

「僕が信用できないってことかな。
それにしてもさ、僕は藍鉄くんがここまで僕の言うこと聞かないとは思わなかったな」

オリジナルさんが独り言のように、僕を見ないで言った。
……何か、いつものオリジナルさんと、違う。

「僕は、暗に君に「ここから立ち去って」って言ってるんだけど、
そう言ったら分かってくれる?」

立ち去る?
何で、わざわざ……僕には全然意味が分からなかった。
アペンドさんが大丈夫なのか、
大丈夫だとしてもそうじゃないとしても、僕はただ手伝おうとしてるだけなのに。

「意味が、分からないです」
僕は正直に言った。
「アペンドさんを運ぶなら運ぶで、どうして手伝うことすらだめなんですか?」

オリジナルさんが黙っている。
「アペンドさんは大丈夫なんですよね? 本当なんですか?」
僕はさらに付け加えた。

オリジナルさんが溜息をついた。
「……僕はね、藍鉄くんが怖がりなこと知ってるし、
僕も藍鉄くんに嫌われたいと思わないし、だからあまり強い口調で言いたくないけどさ、
その調子ならいいか」
それから僕を睨んだ。

「黙れ」

僕はびっくりして、後ずさりした。

「大体こいつもこいつだよ。
三重人格なんてほんとめんどくさい。
どうせ、また別の人格を押し殺そうとして混乱したってやつでしょ」

オリジナルさんがアペンドさんの服をつかんで、立ち上がらせた。
アペンドさんは、何の抵抗もなく、目を閉じたままそこに立った。
……寝ているにしては、不自然だけれど。

「……まだ、見てるの」
オリジナルさんが僕を見て言った。
「いいか。君の記憶は消すから」

その後、オリジナルさんは何かよく分からない言葉を続けた。
「無理に人格を変えないで。
君の中の3人はまだはっきりしてないんだから。
君が「こうなりたい」じゃない。
君は3人いなきゃ君を保てない」
そこだけは、何となく、分かったんだけど……。

その後に、オリジナルさんが何かを言うと、
アペンドさんが目を開けた。

……何だか、機械、みたいに。

「もー! アペンド、こんなところに居ると思わなかったよ!
探してたんだから」
オリジナルさんが、突然アペンドさんに言った。
「……?」
アペンドさんが首をかしげた。
「はい、今日のバナナ。
今日は仕事だったんだよね。お疲れ様」
いつものように、バナナをオリジナルさんが渡した。
「……ありがとう」
そう言ったアペンドさんは、
仕事のあの時みたいに、やっぱり何を考えているか分からない顔をしていた。

「で? アペンドは何をしにここに来てたんだっけ」
「……藍鉄くんに、……」
「ん?」
「明日も、よろしく、って」
アペンドさんがこっちを見て言った。
僕は、よく分からないままうなずいた。
「そっかそっか。用事はそれだけだったね?」
「多分」
「……多分って、適当だなぁ」

オリジナルさんがアペンドさんの手を引いた。
「じゃあね、藍鉄くん」
そういって二人は僕に背を向けて、歩きはじめた。

途中でオリジナルさんが立ち止まって、僕の方を見て、手を振った。

「じゃあね。さっきのことは、忘れてもらうから」