会話#041+「眼帯」 - 6/6

#046

ネタも尽きたので、俺は話しかけられないように、
隠れながら他の人を見ていたけど、
何だか、噂されている気がする。

「アペンドさんの様子がおかしいんだってー」
「急に何かに目覚めたみたいな雰囲気だったとか言ってたよ」
「こわいなあ……」

「僕なんか右目とられそうだったんだよ!」
「あの眼帯ってほんとに右目なくってつけてるってこと?」
「アペンドさんって何かと契約でもしちゃったの!?」

え?

「もしかして悪霊に取りつかれたとかじゃないのかな、
扇舞くんって悪霊祓ったりできる?」
「いや、僕はそんなことできないよ、っていうか、悪霊じゃない可能性だって……」
「いざとなったら俺が斬るしかないか」
「いや、アペンドさんを斬る訳にはいかないだろう、原因を消す必要が……」

……ちょっとまって……?

俺がそれを物陰で聞いていると、
後ろに気配がして、俺は慌てて振り返った。
そこに居たのはトリッカーくんだった。
「噂になってるアペンドさんじゃん!
何かあったの? 急に右目ほしがったりするようになったとか聞いたけど!」
トリッカーくんは一通り言った後、急にはっとした顔になった。
「あっ、でも本気で右目欲しいとか、いうなら、
僕だって、その、抵抗するよ、眠らせてでも……」
……あれ……これって……真に受けられてる……?

「と、トリッカーくん……」
「なっ、なに……ってアペンドさん、何で泣いてるの?」
俺はやっとわかった、ボケだって、分かってもらえてなかったんだ。

「全力でボケたのに誰も突っ込んでくれない!!!」
「はぁ!?」

俺は涙目で言った。
トリッカーくんはひどく驚いた声を出した。

「俺はボケてたのに、何か全部真に受けられてたんだ……。
藍鉄くんは泣いちゃうし、スターマインくんとレシーバーくんには逃げられるし、
バッドボーイくんと執行部くんにもびびられた挙句やっぱり逃げられたし……」
「……あのさ、アペンドさん、
僕はアペンドさんがその皆に何言ったかは噂で聞いただけだけど、
それ多分ボケって言わないよ……皆怖がってるし」
「そ、そうだったのか……」
「単純に迫真の演技すぎたんだよ」
「や、やだな、俺は怖がられたくなかったのに……ボケてるつもりだったのに……」
「アペンドさん、本気になるところを間違えちゃったんだね……」
トリッカーくんには溜息をつかれてしまって、
俺は誤解を解きに行かなければならなくなった。

「……って訳で、あの「右目が疼く」って言ったのはボケだったんだけど」
「あれボケだったんだ! うわぁ。いきなり何言ってんだろって思っちゃったよ」
最初の相手だったオリジナルに言ってみると、
オリジナルもボケだと分かってくれてなかったことが分かって、俺はショックだった。
「何にも反応されなくて困ったんだよ、俺」
「いや、僕はどう反応するか困ったんだけど」

「あの、俺は別にいつも通りだから、あれ、冗談だから」
藍鉄くんにも説明すると、藍鉄くんは急に安心した顔になった。
「藍鉄くんなら、冗談だってわかってくれると思ってたんだ……」
「あんなの分かりません……」

「さっきの件なんだけど、別に俺の中に悪魔とかいなくて……」
スターマインくんとレシーバーくんにも説明をした。
話しかけるまでずっと怯えた目で見られてて、正直困ったけど……。
「この世の終わりかと思ったよ……」
「アペンドさんが悪魔に変身した姿とか想像しちゃったよ……」
「そ、そこまで……?」

あとはバッドボーイくんと執行部くんにも説明をした。
「ほら、特に右目もなくしたわけとかじゃなくって」
眼帯を外して説明すると、二人とも「よかったー」とため息をついた。
「本当にないのかと思ってびっくりしちゃいました」
「ごめん、仕事の格好って言ったから、仕事の演技だってわかってくれてるかと思ってたんだ」
「あの、僕はそんな前提もなしにいきなり右目よこせって言われたんだけど……。
アペンドさん、全体的に説明が足りなさすぎだと思います……」

こうして何とか俺に対する皆の誤解は解けて、
結果的には、眼帯に対する抵抗感も多少はなくなった、気が、する。