#096
また僕の曲の撮影の仕事が入ったみたいだ。
今度はトリッカーくんメインのお仕事で、別バージョンはエッジくんらしい。
エッジくんは別バージョンだから当分仕事に行かなくても大丈夫そうだよ、と言っておいたのに、
撮影中に連絡が来て、急遽エッジくんにも今から来てほしい、って話になって、
僕は慌ててエッジくんに連絡することになった。
そして、いったん撮影が終わって、エッジくんが帰ってきた。
トリッカーくんはまだ撮影を続けているみたいだけど……。
「エッジくん、今日はお疲れ様。急に大変だったね」
僕が声をかけると、エッジくんは泣き出しそうな顔で僕の方に近づいてきた。
「聞いてください~! オリジナルさん~!」
「ど、どうしたの?」
「当分休みだと思ってたら急に呼び戻されたし……」
「うん、それは本当に大変だったと思う」
「それに、相当慌ててたのか、フードを掴まれて引きずられたんです!!」
「ええっ、大丈夫だった!?」
「なんとか……うう」
エッジくんはフードを触りながら涙目で言った。
「それになぜか、何回も「フード掛け器」って呼ばれるし……僕の立場は……」
「ひどいね……」
僕は懐を探った。
「確かにその白いフードは目印だけど。エッジくんはちゃんとエッジくんだから。
元気出して。バナナ食べる?」
僕はエッジくんにバナナを渡した。
「うわーん! ありがとうございます!!」
エッジくんは嬉しそうにバナナを受け取った。
よし、これで大丈夫かな、と思ったら、トリッカーくんが撮影から戻ってきた。
「オリジナルさーん! 別バージョンの話聞いてきたけど、
扇舞くんと執行部くんにお願いしたいって」
そうそう、別バージョンでエッジくんが出る予定が、
結局トリッカーくんとエッジくんのペアになったから、
新たに二人欲しいとか言われてたんだよね。
「そっか。撮影お疲れさま、連絡もありがとねー」
「いえいえー」
そして後日、扇舞くんと執行部くんのお仕事も無事終わった。
執行部くんに仕事を伝えに行ったときは、「僕また行くんですか!?」 とか言ってたけど、
「経験も積めるからいいよね、これですっかりベテランだよ」って言っておいた。
執行部くんは別にベテランになりたいわけじゃない、とは言ってたけど……いいよね。
まあ、エッジくんの撮影分は少なくて、そこを執行部くんもやった訳だけど、
トリッカーくんがメインでやってたところを、扇舞くんがやることになった訳で。
トリッカーくんと扇舞くんは同期で仲が良いから、
撮影のことで相談するのも楽だったと思うし、そこまで悩むことはないだろうけど……。
「扇舞くん、撮影お疲れ様」
「オリジナルさん、ありがとうございます」
「何か撮影中困ったことってなかった?」
「基本的にトリッカーくんが張り切って教えてくれたので、特には」
「あはは、やっぱりトリッカーくんは張り切ってたんだ」
「いつもノリノリでやってますから。……あ、でも一つ」
「ん?」
順調そうだったけど、何かあったのかな?
「今回結構ダンスしてたので、こう、この袖がはためくんですけど、
いつも撮影中って袖ばっかり見られるんですよ」
扇舞くんや、扇舞くんと同じような衣装の人たちは皆、袖がトレードマークって感じはするけど……。
「それで、なぜか「扇舞」じゃなくて「袖」って呼ばれることがたまに……」
「えっ……」
「僕の立場って……」
扇舞くんは自分の袖を持ち上げながら言った。
エッジくんがフードって言われてるみたいなのと同じことに……??
かわいそうに。僕は懐を探った。
「ひどいなぁ。でもその袖がちゃんといい仕事するんだもんね。
撮影も終わった訳だし、袖って呼ばれたことは忘れちゃおう。バナナ食べる?」
僕はバナナを渡した。
「……はい、食べて忘れちゃいます!」
扇舞くんはそう言ってバナナを受け取った。
よし、一件落着!