#097
僕の周りには撮影の仕事が来て、それを僕が知らせて、
僕に全然撮影の仕事が来ないことへの悩みなんか、
バナナを食べていれば忘れられるよね。
ああ、もしかしてバナナって世界を救えるのかな??
それはさておき、そういえば、
大分前に、シエルくんにお仕事のお知らせをしに行ったことがあったな。
シエルくんは初仕事だったけど、共演相手がアペンドだったから、
詳しいことはアペンドに聞いて、って全部投げちゃったんだよね。
正直僕なんかが何か言わなくても、アペンドは仕事たくさんしてるし、
任せておけば大丈夫でしょ……べ、別に悔しくなんか……。
結局撮影もだいぶ前に終わってたけど、それから話は聞いてないなぁ。
アペンドは補佐的に入るつもりだったらしいのに、結局結構色々やったとか言って愚痴ってたけど、
とりあえずバナナ食べさせておいたら黙ったし。
でも、初仕事はどうだったかって聞いておいたほうがいいかもしれないな。
僕はシエルくんの部屋を訪ねることにした。
すると、シエルくんが、ちょうど部屋に帰ってくるところに出くわした。
「あ、シエルくん」
「……」
声をかけてみたけど、シエルくん、何か、気持ち悪そう……。
口に手を当てたまま、よろよろと歩いている。
「だ、大丈夫?」
僕は慌てて駆け寄って、背中をさすりながら、横について部屋に一緒に入った。
「……お、オリジナルさん」
「ほんとに大丈夫?」
「す、少し落ち着きました」
「何かあったの?」
ベッドにとりあえず座らせて、シエルくんに何があったのか話してもらうことにした。
「さっき、アペンドさんと、ご飯を食べに行ったんです」
「アペンドと?」
「前に、撮影で一緒になったから、そのときの打ち上げみたいな……」
「ああ、なるほどね。って、随分経ってない? 今頃行ったんだ」
「お互い撮影終わったときにへとへとだったので、落ち着いたら行きましょう、って話になったんです」
まあ、打ち上げを即やる必要もないか。
「それで、食べに行って何かあったの?」
「……それが。
アペンドさん、僕の目の前でステーキ10枚食べたんです」
「へ?」
「僕は少食だから、1枚食べるのに精いっぱいだったんですけど……
アペンドさんは「シエルくんは少食だね。もっと食べないと健康になれないよ」って、
10枚食べた後に平気な顔して言って……。
言ってることは間違いないですけど、その大量に食べてるのを見て、
僕、だんだん気持ち悪くなってきちゃって……」
「うわあ……」
あいつ、そうなんだよな。大食いなんだよな……。
周りから外れた量を食べられるんだけど、……あまりにも外れてるから、
あまり人前でご飯を食べさせないようにしてたんだけど……。
「それは災難だったね……」
ああ、何とかして元気になってほしいなあ。
僕は懐を探った。
「本当にお疲れ様。それは見なかったことにして、
バナナ食べて忘れよっか?」
僕はバナナを差し出したけど、
シエルくんは僕を睨んだ。
「……あの、食べ過ぎで気持ち悪い話してて、何でバナナ出してくるんですか……!」
「えっ……バナナは別腹……」
「オリジナルさんもバナナ食べすぎな方だと思いますからね……!」
シエルくんは吐き出すように言って、ベッドに転がって僕に背を向けた。
……駄目なときは、駄目だった。
#おまけ(後日)
「前はごめんなさい」
「はい」
「シエルくん、撮影自体では特にトラブルはなかった?」
「アペンドさんが……」
「他にもあいつ何かやらかしてんの!?」
「廃墟に僕を置いて一人で教会で踊ってて、それをボツにされてました」
「なにやってんのあいつー!」
「白銀の荒野ですごく震えてたので、寒さを紛らわすのに室内に逃げて踊ってたんだと思います」
「あいつ自由すぎかよ……」
「間違えて草原に行ったり」
「ほんと……アペンドが迷惑ばっかりかけて……ごめんね……バナn」
「バナナは今日もらったからいいです」