交差#21「頼りになる援軍」 - 2/3

さて、こうして集まった皆を連れて、きっと先にステージをやってくれているはずの場所へ、僕は向かった。今回はどうだろう。
とりあえず、ステージの外で皆には待機してもらって、先に僕が中の様子を見ることにした。
ちょうど曲が鳴りやんでいて、ステージの中央にはライトくんが立っていた。それを、ステージの前でアペンドが眺めていた。
「……ああ、皆は誘ってきた?」
アペンドが僕に気付いてそう言った。
「うん、外に結構いるよ」
「そうか、それならよかった。な?」
僕が答えると、アペンドはライトくんの方を向いて聞いた。
「そうだな、ちょうどよかった」
静まり返ったそこで、ライトくんの声が響いて聞こえた。この様子だと、……ちょうど今終わって、ステージは、失敗したんだ。
「さっき、変身まではできたんだ。……誰だったって?」
「シエルくんだったな。失敗したから、消えちゃって。「もう少し、時間を空けて、また来る」って言ってた」
「そっか……。それで、次はアペンドがリベンジの番だよね」
「うん。でもさっきのすぐ後だし、俺はきっと新しい人は呼べないから、オリジナルが皆を呼んでくるのを待ってたところだ」
ステージが失敗したのも久しぶりだし、ライトくんもちょっと悔しそうだけど、仕方ない。
「それじゃ、中に入ってきてもらうね」
僕がステージの入り口を見ると、そこから何人かが待ちきれずにこっちを覗いていた。早くステージが見たいのか、それとも自分がステージに立ちたいのか……。
「うん、いいよ、来て」
そういうと、なだれ込むように皆が入ってきた。
「おおー、いいね!」
ステージが失敗した雰囲気をぶち壊して、皆はわくわくしてステージを見回している。
「あのね、とりあえず皆は応援役だからね。アペンドにステージに立ってもらうから、皆はおとなしくしててね」
僕が確認すると、皆はちょっとしゅんとして、それからおとなしく客席の端に並んだ。
「変身するときになったら呼ぶかもしれないから、心の準備だけはしておいて」
アペンドが皆に呼び掛けると、
「いつでも来い!」
と、パンキッシュくんが大声で返した。その周りもそんな顔をしている。
僕とライトくんも皆の並んだ横に立って、ステージのアペンドを見上げた。

さて、今度こそだね。
曲が流れ始めるのを待っていると、何だか雑音が聞こえ始めた。
「これだよ、この音のせいで」
ライトくんが静かな声で言った。
「まともに曲も聞こえなくなって、まるで手探りだった」
「これもステージの邪魔ってやつなのかな」
「多分な。でも、どこから鳴ってるのかわからないし」
僕たちが話している間に、アペンドはその雑音に耳を傾けていた。
「……そこか」
アペンドが呟いて、ステージの前方に歩いていくと、右腕を掲げて、それから握った手を振り下ろした。
何もないように見えたそこに、一瞬緑の線でスピーカーの形が見えて、それが粉々に砕けた。
「何あれ、全然分かんなかったよ」
エッジくんが言って、横にいたイレイザーくんもうなずいている。
「痛かった」
アペンドは言いながら、そこに背を向けてステージの中央に戻っていった。さっきの雑音はぴたりと止まっている。
じゃあ、本当に今度こそ。

まだ、邪魔をぶちのめしたあれに呆然としている僕たちの前で、かわいらしい曲に合わせてアペンドが踊っている。その振りに全く動じずに、最初からそうだった、みたいに、何の違和感もなく踊って見せる。いわゆる完璧ってやつだ。逆に言えば、何の感想も抱けないような、可もなく不可もなく……何の隙もない、何も言わせない、そういう雰囲気。
ちょっと、不気味だよね、それはそれで。何も言うことないのに、何だろう。
さっき僕たちに見えない何かを壊したことにも、何となく、同じような不気味さを感じていたかもしれない……。

そんなことを考えていたのは僕だけなのかわからないけれど、変身のときがやってきた。
アペンドはいつもなら誰か来るはずのステージの袖を覗いた。そのあと、首を横に振って、僕らのいる方を見た。
「来てない。誰か、続きを」
そう言われた中から、真っ先にステージに飛び乗ったのは、シロクマくんだった。
「待ってました!」
「くっそ、先越された!」
パンキッシュくんが悔しがって声をあげた。でも、
「今はキュートの曲だから先輩は引っ込んでてくださーい!」
そう言われて、大人しく後ろに下がったけど、いらっとした顔になっていた。
「次出番あるときは絶対俺が……!」
そう言っているパンキッシュくんに、周りの皆は、次は出られそうもないな、と思っているみたいだった。

無事シロクマくんが曲の終わりまで踊って、ステージは成功に終わった。
シロクマくんは満足げな顔でステージから降りてきた。
その後ろからアペンドが何も考えてなさそうな顔で歩いてきて、皆で二人を出迎えた。
「おつかれー」
「どうだったどうだった??」
シロクマくんが、何か言ってほしげな目で皆を見ている。
「ああ、うん、さすがだったよ」
ライトくんが言って、シロクマくんは飛び跳ねたけど、
正直ライトくん、そこまで心を込めて言ってなかった……のは、シロクマくんは気にしてなさそうだなぁ。
まあ、かわいかったとは思うよ。ただ、求められちゃうとね、どうしてもね……。
「アペンドさんの最初のあれが……」
シロクマくんが飛び跳ねてる方とは別の方で、エッジくんが呟いている。
「あれって?」
アペンドが聞いて、エッジくんはびっくりした顔になった。
「あんなかっこいいことしてたのに! あれはあれしかないでしょ!」
「ああ、あれ、痛かったよ」
アペンドは右手を握りしめて、淡々と言った。
「けがはないんですか?」
「衝撃だけだったから、別に」
「それならよかったですけど、……」
まるで忘れちゃったみたいな反応して……。やっぱ何となく、気味悪い。
「そんなことより次のステージじゃないか?
せっかく皆も来てくれてるんだし」
アペンドはそう言って、僕とライトくんの方を見た。
「あー。そうだね」
僕は答えて、次のステージの方へ皆を誘導した。