次は楽器を持つステージだ。最初にライトくんが来たときの曲が確かここだったし、ライトくんはギターを持つと、すぐにステージの中央で姿勢よく立って見せた。
「ここってもう一人立ってもらいたいけど、どうしよ」
ライトくんが言って、僕はまずパンキッシュくんを見ようとしたけど、そこに視線を移すより前に「またなの?」と不満そうな水着くんの顔が見えて、皆の中では後ろの方に隠れていたバッドボーイくんの方に視線を移した。
「ギターならブルームーンくんとか鶴くんとかあたりが得意そうだったけど、二人ともいないし……どう?」
バッドボーイくん、ドラムやるし、ギターもいけそうな気がするし……と思ったけど、マスクをつけているから返事がない。
「首を振らないからいいってことだな。じゃ、いこうぜ」
首を「横に」振らなかったというこじつけで、バッドボーイくんはパンキッシュくんにぐいぐいと体を押されて、ステージに立たされた。そして、そこに置いてあったギターも肩にかけられた。まるで人形のような扱いだ。
でも、ギターを手にしたバッドボーイくんの目付きは、明らかに変わっていた。本当のバッドボーイくんの性格を知らなければ、普段もきっとこんな目付きに見えているかもしれないし、これ以上に威圧感のある目付きかもしれないけれど、これは本当に真剣そのものだ。やっぱり楽器によって本領発揮なのかもしれない。
「じゃ、よろしく、先輩!」
すぐ出られる位置にスタンバイしたバッドボーイくんに、ライトくんは手を軽く振った。
そのあとすぐ、曲が始まった。
屋外イメージのステージだから、少し風を感じる。前より少し風が強く感じるけど、これもステージの邪魔の一種なんだろうか。
たまに、強い風にライトくんは目を閉じるけど、それでも自信に満ちた顔でギターをかき鳴らしている。
この程度の風、なんてことない、ってところかな。
二人目の登場のタイミングで、バッドボーイくんもちゃんと出ていった。大丈夫そう。
「じゃあ、俺はそろそろ交代だ」
そう言って、ライトくんが誰か来ていないか、ステージの袖を確認すると、そこから誰かが出てきた。
「出番ですね。分かりました」
はっきりとした声でそう言いながら出てきたのは、生徒会執行部くんだった。話し方はしっかりしたその制服に見合っている。
「じゃあ、このギターを頼んだ」
「任せてください」
凛々しくそう言うと、渡されたギターを握って、ステージに立った。そして、ステージに残っているバッドボーイくんに視線を向けて、少し口角を上げて見せた。
バッドボーイくんも一瞬執行部くんの方へ目を向けて、それから背中を向けた。ここからは、二人は背中を向けあって曲の最後まで行く。
まだ風はある程度強いままだけれど、二人の動きはぶれない。最後にステージの真ん中に執行部くんが戻って、締めに入った。
「お疲れ様ー」
ギターを置いてきた執行部くんとバッドボーイくんは、並んで僕たちの方にやって来た。先に戻ってきていたライトくんと一緒に、僕たちは二人を迎えた。
「生徒会執行部くんだよ」
「はじめまして、よろしく」
初対面のライトくんやラディカルくんやトムくんに、執行部くんは挨拶した。
「よかったね、バッドボーイくん、執行部くんが来るタイミングでステージにいて」
僕がバッドボーイくんに言うと、バッドボーイくんはうなずきはしなかったけど、まあな、みたいな目をして見せた。
「え、……仲いいの……?」
ラディカルくんが、執行部くんとバッドボーイくんを見比べて言った。けど、すぐにスターマインくんに腕を引っ張られて後ずさりさせられた。
「意外そうでも言っちゃだめだよ!」
スターマインくんが、ラディカルくんの耳元で小声で言った……聞こえてるけどね。
「不良と優等生の代表が並んでるみたいだにゃー」
「だからっ、言わないの!」
さらに横で声をあげたトムくんも、スターマインくんに腕を引っ張られた。
「あ、僕たちは前仕事で一緒だった縁でよく一緒にいるだけだから、……ねえ?」
執行部くんが説明してバッドボーイくんに同意を求めると、やっぱりバッドボーイくんはうなずかずに、目で執行部くんを見て、まあ、そんなところ、とでも言ったかのような顔をした。
「仲いいやつが来てよかったよ、気が付くと一人でいるからさあ」
パンキッシュくんは安心したような表情でバッドボーイくんを見た。
「……ほんとはもっと俺に心を開いてくれればいいのにさ……」
「それはいい加減に諦めたらどうなの」
「お前はいちいちうるさいな!」
「こんなねちねちした先輩と仲良くなりたくないよ」
小声で言ったパンキッシュくんは、水着くんにまた嫌味のように言われてしまっていた。
「執行部さんも来てくれたことだし、次に行こうか!」
「そうだね、行こう!」
ライトくんが仕切ってくれて、僕もうなずいた。
「よーし、はりきっていくぜー!」
ライトくんが先頭で駆け出して、皆がそれに続いていく。僕や執行部くん、バッドボーイくんは最後尾についた。
「あ、執行部くん。ここにいるのが全員じゃなくて、まだ部屋にも何人かいるんだ。けど、しばらくは、あのライトくんがステージに立って新しい仲間を呼ぶために頑張ってくれるから、こっちについてきてる皆で応援することにしてるんだ。バッドボーイくんも来てくれてるから、執行部くんも一緒についてきてもらっていいよね」
「はい」
僕は執行部くんに適当に説明した。
「バボさんも応援したくてついてきてるんだ」
執行部くんが目を丸くしてバッドボーイくんを見ると、バッドボーイくんは少し困った顔をした。
「パンキッシュさんがどうしても一緒に行こうって言うから……」
マスクの中から、小さな声が聞こえた。……やっぱり無理矢理だったんだ……。
「でも、出迎えにバボさんがいて僕はよかったよ」
「……僕も、来た甲斐があったかも」
そう言っているバッドボーイくんの目は少し嬉しそうに見えた。