ビューティーエリアに着くと、日焼けした水着くんが一人、立って待ち構えていた。
「待っていたよ」
何故か、やけに気味の悪い笑みを浮かべて出迎えをしている。
「はいはい、別に水着くんの日焼け驚かない」
僕は後ろの皆を引き連れたまま、さっさと水着くんの横を通りすぎた。
「こらー! ちょっとは付き合ってもいいでしょ!」
後ろから、水着くんに怒鳴られた。
「逆にどう付き合えばいいの!」
僕が振り返って聞くと、水着くんは不服そうな顔をした。
「色々あるでしょ、『なんと美しい……こんな仲間がいたとは……』とか!」
「ごめん、ない、水着くんでそれはない」
「ひどい!」
皆から笑い声が漏れている。……ちょっとした気分転換にはなったよ。
さて、一曲目も、今まで通りライトくんがステージに上がって、始まった。
でも、時々表情が険しくなるのが見えて、やっぱり違うエレメントのステージは難しそうなのが伝わってきた。しかも、ビューティエリアの曲は、今までに比べて雰囲気が違って、余計難しく感じる。
それでも、なんとか交代にこぎ着けた。
「あっ、来てる!」
ライトくんは新しい仲間が呼べて、安心した表情になった。
そこに現れたのは、もう一人の水着……通称はボクサーくんだ。
「おおっ、ここでボクサーくん! お久しぶり!」
水着仲間だからか、水着くんが手を振っている。
「先輩ー!」
ボクサーくんも手を振り返している。……と、思ったら、ボクサーくんが転んだ。
「ええっ!!」
ステージ袖に引っ込んでいたライトくんが、ボクサーくんの様子を確認しようと顔を出した。
「いって……な、なにここ、すっごく滑る!」
「さっきまでそんなことなかったぞ、裸足だからとかじゃないのかよ」
せっかく交代したのに、ボクサーくんがステージの上で、立ち上がっては転んでいる。
「……なんか、足元に液体がない?」
ボクサーくんの様子を見ていた水着くんが言って、皆でステージの床を見つめると、たしかに、じわじわと何かの液体が広がっていた。
「ボクサーくん、無理しなくていいから!」
「う、うん……」
僕はそう声をかけて、転び疲れたボクサーくんは、ステージの床に膝をついたまま曲の終わりを待った。
「何だったの……」
曲が終わってから皆でボクサーくんの近くに駆け寄ると、ボクサーくんは放心状態だった。
「ステージの邪魔、かな」
イレイザーくんが静かに言って、僕もうなずいた。
「せっかく来てくれたのに、災難だったね……」
「また今度……」
ボクサーくんは、そこで光に包まれて消えてしまった。
「こんなパターンまであるのか……」
皆でしばらく、床の液体を見つめていると、急にそれが蒸発するようにして消えていった。
「な、なんだ?」
皆が驚くなかで、何となく、蒸発して消える直前に、緑に発光して見えた気がしたのを、僕は思い出していた。
そして、ステージの袖で、重い足音がした。
「……アペンド」
ステージの袖から、アペンドが冷たい目をして僕達の方を見ていた。あの液体を消してくれたのはアペンドだったんだ。
『次』
脳に響いてくる。そうだ、次をやらせてくれってことだ。
「アペンドさんだ。頼んだ!」
ライトくんは嬉しそうな顔でそう言って、僕含めて皆は客席に戻った。
曲が始まると、アペンドは普段通りに振る舞い始めた。
「まだ恥ずかしがってるのか?」
パンキッシュくんが僕に聞いてきた。
「うん、多分ね」
僕は答えた。多分っていうか、何も変わってないから、そのままだ。
交代する相手は僕が決めることにして、せっかく日焼けしてきてくれた水着くんに頼んだ。交代の時は、アペンドは素早くステージ袖へ行ってしまって、水着くんが何か話したりすることはなかった。
「おつかれさまー!」
ステージは成功して、水着くんを出迎える。
「なんとかなったね。やっぱりアペンドくんが頑張ってくれてたからうまくいったよね」
水着くんがそう言って、やっぱり、ちょっとさみしい空気が流れる。
「恥ずかしがらなくていいのになあ……」
ぽつんとパンキッシュくんの声が響いた。