休日は歌の仕事が入っていて、リンは朝から事務所に行く予定になっている。リンが自分の部屋から出ると、朝ごはんの準備をしていたレンが、少し驚いた顔をした。
「おはよう」
「おはよう、……起きたんだ」
「うん、起きれた」
レンは、仕事だったっけ、と呟きながら、開けた袋から食パンを取り出し、トースターに入れる。
「リンもいる?」
「うん」
2枚並べて食パンを焼く間に、既にスイッチが入れてあった電気ケトルが、お湯の沸く音を鳴らし始めた。
「スープどれがいい?」
レンは、手際よくカップを並べて、粉末のインスタントスープの箱をリンに見せる。色々な味の組み合わせになっている。
「うーん、コーンスープかなぁ」
「分かった」
リンが部屋の前で立ったままでいる間に、レンはどんどん準備を進めていく。手間がかからない朝食とはいえ、そのちょっとの手間を全部レンが引き受けている。慌ててリンはレンの横に駆け寄った。
「私が起きてくる予定なかったでしょ」
「いや、一人でも二人でもやること一緒だし」
「……そっか」
さほと手伝うようなこともなく、たたパンが焼けるのを待つだけになる。二人並んで、しばらくぼんやりと立っていた。
「マーガリン塗る?」
「うん」
リンは聞いて、マーガリンを冷蔵庫から取り出す。パンが焼けて、お湯も沸騰したので、リンはパンにマーガリンを塗って、レンはカップにお湯を注いだ。
テーブルに運んで、向かい合って座る。
「レンは今日休みだっけ」
「うん」
「……練習しに行くの?」
「まあ」
当たり前だろ、という顔をして、レンはスープを一口飲んだ。聞くまでもなかったか、とリンはため息をついた。
「リンは? 仕事一日?」
「いや、午前中」
「事務所?」
「うん。今日はとりあえずデモの曲聞いて確認するだけだって」
「そうなんだ」
パン1枚とスープだけなので、あっという間に朝ごはんは終わった。食器を軽く洗ってから、支度のために一旦それぞれの部屋に戻る。
朝から仕事なのは面倒だけれど、それでも新しい曲が歌えるのは楽しみだ。リンはわくわくしながら着替えを済ませて、自分の部屋を出た。レンも同じようなタイミングで部屋を出てきた。
「レン休みなんだよね、こんな早くから行かなくても……」
「もう起きたし、別に家にいてもやることないし」
そのまま、一緒に外に出て、リンが鍵をかける。そのまま、二人は並んで歩く。さほど遠くもないので、少し仕事の話をしているうちに、事務所にたどり着いた。
「じゃあね」
「うん」
仕事の待ち合わせの部屋に行く前に、リンはレンに振り返る。レンは、軽く手を振って見せた。