世界の修復者と私のボイストレーナー (3)人と一緒に歌うこと - 1/5

「危なかった~……」
「……気づいて良かった」
 学校に向かうバスに乗り込み、リンは大きく息をついた。レンも、その横で小さくため息をついた。
 変な時間に昼寝をしたリンは、夜まともに眠ることができず、次の日結果的に寝坊した。
 席が空いていたので、リンとレンは二人の座席に並んで座った。
「朝ごはん食べられなかっただろ、ほら」
 レンが、ショートブレッドの箱を取り出して、1袋リンに渡してきた。
「あ、ありがと……」
 ありがたく受け取り、袋を開ける。学校に着くまではまだかかるから、それまでには食べられそうだ。
 レンは、しばらくリンの様子を見てから、バスの外の風景を眺め始めた。リンは何か話そうと思ったが、食べている間に話していたら食べきるのも遅れるし、とりあえず黙っておくことにした。
 目覚まし時計は鳴っていたが、なんだか頭がぼーっとして起きられなかった。いつの間にか眠っていたら、部屋から出てこないリンを心配して、レンが起こしてくれた……よく、ある。このショートブレッドも、寝坊したときに、よく、食べる。
「……昨日、眠れなかった?」
 リンがショートブレッドを食べきったのを確認して、レンは話しかける。
「変な時間に寝たから……」
「そっか」
「起こしてくれてほんとに助かった」
「うん」
 特になんでもない顔をして、レンは外に視線を外した。……自力で起きろって話なんだろうけど、とリンは思いつつ、そうは言ってこないレンのことが、少し不思議に思えた。