#063
#生徒会執行部さん視点
フェイカーさんに、嫌われたんだな……。
僕は仕事から戻って、しばらく落ち込んでいた。
「おかえりー、執行部くん。……ど、どうしたの」
顔に手を当てて、何が悪かったのかずっと考えていたら、
前から声をかけられた。
手をおろすと、シロクマくんが僕の顔を覗き込んだ。
「さっき、仕事の休憩中に、フェイカーさんにこれからよろしくって言ったんだ。
そしたら、「話しかけるな、この鈍感」って言われて……。
何が駄目だったんだろう……」
僕が言うと、シロクマくんはうーん、と考え込んだ。
「短いけど、一応一緒に仕事するんだし、
全く喋らないのも変だと思ったんだけど、なれなれしかったのかな」
「いや、そんなことはないと思うよ。
話しかけるのが普通だと思うな、僕は」
シロクマくんがそう言って、僕は少しだけ安心した。
「女の子って気難しいもんねぇ。
でもさ、フェイカーさんだって演技中に笑ったりはするでしょ?」
「今日の仕事ではそんなシーンなかったからなあ……」
「そっか……え、でも明日以降のシーンでは?」
「……分かんないけど」
シナリオを思い出してみたけど、どうだったかなぁ。
だんだん表情を柔らかく、みたいなことは書いてあったかもしれないけど。
「ま、仮にフェイカーさんが演技でもいいから笑ったとしよう。
そういうときに、「笑った顔って可愛いんだね」って褒めてあげるといいんだよ!」
「えっ!!!」
シロクマくんが得意げに言った。
いや、でもそれはさすがに、恥ずかしすぎるというか!
「ツンとしてる子は、案外そういうところでデレるもんなんだよー。
それで心を開くかもしれないでしょ?」
「……そ、そうなのかな」
にわかには信じがたいけど……状況を変えたいのは、確かだし。
そんな助言を受けた次の日の仕事では、
昨日と変わらずフェイカーさんは不機嫌そうな顔をして来た。
しばらくフェイカーさん単独のシーンの撮影になって、
僕はそれを、遠くから見ていた。
さっきの不機嫌そうな顔はどこへいったのか、優しい眼差しをしている。
……可愛い、のかも、しれない。
撮影の合間に休憩が入って、
僕とフェイカーさんは二人で休憩場所に取り残された。
沈黙が続く。
表情をうかがってみたら、不機嫌そうな顔に戻っている。
でも、急に台本を取り出して、中身を確認しだした。
そして、ちょっと表情を変えてみたりしていて、
……もしかして、演技の練習でもしてるんだろうか?
僕も先の台本の内容を確認したら、
フェイカーさんの役のところに、
「少し笑って」という指示が書いてあった。
……フェイカーさん、笑うんだ。
そして休憩が終わって、
例のフェイカーさんが笑う演技をするシーンに入った。
僕は正面でそれを見つめていなければいけなくて、
見ていたけど、……想像できない表情に、なった。
ほんとに、笑ってる……。
やっぱり、可愛い、かも。
そのシーンで今日の撮影分は終わって、
僕は終わりの挨拶をしたくて、フェイカーさんに話しかけた。
「あの、お疲れ様でした」
フェイカーさんは演技の表情が少し抜けていなくて、
昨日ほど不機嫌そうな顔をしていなかった。
「……えっと、昨日は怖かったけど、
フェイカーさんて、笑うと……そ、その、
……可愛いん、ですね」
フェイカーさんは急に眉間にしわを寄せた。
「は? 何言ってんの? ばかなの?」
どきっとするような表情も見せずに、
フェイカーさんは僕の目をまっすぐ見て言った。
「私にそんなこと言ってどうすんのよ、この鈍感」
フェイカーさんはそう吐き捨てるみたいに言って、
すたすたと歩いて行ってしまった。
……こうなるに、決まってたでしょ……!!