会話#061+「鈍感」 - 4/4

#064

#胡蝶さん視点

「なんなのあいつ!!」
フェイカーさんがトラッドさんに向かって言った。
「……今日も話しかけられたのかな?」
トラッドさんが困った顔で、フェイカーさんに言う。
「話しかけられたどころの騒ぎじゃないわよ!
可愛いですねってなんなの!? なんなの!?」
「ま、まあまあ、落ち着いてよ……」
「女の子に話しかけないどころか、そんなことまで言うやつだったの?
本当にそれでも、あなたはあいつが好きだっていうの?」
掴みかかるような勢いでフェイカーさんが、トラッドさんに言う。
トラッドさんはびっくりしながらも、少し顔を赤くした。
「……わ、私は、言われてみたいけど……うらやましい」
「……そうよね」
フェイカーさんはトラッドさんの気持ちを察して、トラッドさんから少し顔をそむけた。

「実際、「笑うと可愛いね」なんて、執行部くんらしくないと思うよ」
トラッドさんはちょっとだけ戸惑った顔で言った。
「……それさ、ごめん。
シロクマのやつが吹き込んだっぽい」
「へ?」
突然パンダさんが現れて、トラッドさんたちに近づいてきた。
「あいつってばもう。すぐそういうこと言うんだもん。
執行部くんはあれでしょ? そもそも話しかけ方が分かんないから、
とりあえず言えって言われたら言っちゃったんでしょ」
「あー、なるほど」
フェイカーさんはちょっとだけ、納得した顔になった。

「で、また「鈍感」って言ったの?」
トラッドさんが聞くと、フェイカーさんは「当たり前でしょ」って感じでうなずいた。

ちょっと、かわいそうだなあ。
私はいつも、執行部くんにお菓子食べさせてもらってお世話になってるし。
私も話すのが苦手なのに、執行部くんは気をつかって私に話をしてくれるんだ。
「……あのぉ」
今まで眺めていたけど、私はトラッドさんたちに近づいた。
「あれ、胡蝶ちゃん」
トラッドさんが少し驚いた顔をした。

「た……多分、執行部くんも、必死だから……。
沈黙に、耐えられなかった……。
「鈍感」だけじゃ、言葉が……足りない……かも……」
フェイカーさんも驚いた顔をして、ちょっとだけ後悔したような表情をしたけど、
すぐにまた怒ったような顔になった。
「……わっ、私がはっきり言わなきゃだめとかない。
「トラッドさんに言ってやって」なんて直接的すぎるのよ。
自分で気づけっての」
……ああ、フェイカーさんも、
フェイカーさんなりに、執行部くんとトラッドさんのこと、応援してる、つもりなんだよね。

「……フェイカーさんって、思いやりがありますよね。
それを伝えないのが、また」
私が言うと、フェイカーさんは急に顔を赤くして、
慌てたのか私の方に近づいてきた。

と、思ったら、
「!」
フェイカーさんが、私を急に抱きしめてきた。
「……かわいい。ありがと」
小さい声で、私の耳元でフェイカーさんが言った。

フェイカーさんは私から離れると、照れた顔で後ずさりをしながら、
「どうも、男には素直になれないの。女の子は可愛がりたくなるんだけどな。
急に可愛く見えちゃったりしてさ」
突然ごめん、みたいな顔でそう言った。

相当恥ずかしくなったのか、フェイカーさんは自分の部屋に入っていってしまった。
「……優しいんだよね」
トラッドさんが、フェイカーさんの居なくなった方を見ながら微笑んだ。