交差#29「全ステージの終わり」 - 3/3

「そろそろ行こっか~?」
部屋にひとりぼっちになってしまった僕は、寂しさが募ってしまって、クールエレメントの皆がいる部屋を覗いた。中には、ライトくんとパンキッシュくんがいた。あとの人は出掛けてるんだろうな。
「はーい」
ライトくんはそう言いながら、腰かけていた椅子から立ち上がって自分の尻を叩いた。
「とりあえず、明らかに新しい仲間がいるらしいところは回るよな」
ライトくんが段取りを言っているところで、横にいたパンキッシュくんが立ち上がった。
「俺も行くぞ」
「パンキッシュくんも?」
「引き続き俺は、後輩の勇姿を見守ってやるからな!」
そう言ってパンキッシュくんは得意気な顔をしている。勝手にして……は、さすがに失礼だから、飲み込んでおいた。
「さすがにもう出番はないと思うけど、いいの?」
「そんなのどうでもいいよ。二人だけ行くのも寂しいだろ?」
「ま、そうだね」
ということで、僕たち三人でステージへ向かった。

「まずはあのお菓子のとこか」
ステージに向かいながら、行くステージを決める。
「あそこねー。来てくれてたけど、だめだったんだっけ」
あのときは、壁みたいななにかに阻まれちゃったんだった。今度は安全なステージにいくし、大丈夫なはず。
「そんなこともあったな。……あそこさあ」
パンキッシュくんは僕をちらっと見た。
「あの後、俺とオリジナルでやったじゃん。アペンドもいて」
「あ、そーだったっけ」
「ってことは、3人で来て正解じゃん」
そう言ってまた、パンキッシュくんは得意気な顔をした。
「ほんとだ、パンキッシュさんさすが!」
ライトくんも感心している。
「う、うわー。助かったぁ」
これはもう、認めるしかないよね……偶然だかわかんないけど、よかった。
「……ってあれ、3人ってことは、必然的に、僕も?」
そして、僕は気づいてしまった……。
「当たり前だろ」
「そうなるよ」
「……はい」

そんなわけで、僕達はステージに上がった。……新しい仲間のためだもん、一肌脱がなきゃね。
今度は今までの緊張感からは解放されて、順調に行った。交代のタイミングを迎えると、あのとき来ていた新しい僕が、そこにいた。
「お待たせ!」
「うん!」
ライトくんと交代して、最後まで踊りきった。

「ようこそ! お名前をどうぞ」
「パティシエヘンゼルです」
あのときより少ないメンバーのお出迎えだけれど、名前は先に聞いておかないとね。
「ヘンゼルな。よろしく」
早速パンキッシュくんは名前を略している。呼びやすさを考えたら、そうなるとは思うけど。
「……パティシエってことは、やっぱお菓子作るの得意なのか? あんな歌だし」
「特技と言われれば、そうですね、それが一番です」
「そうか。今いる仲間にも、菓子作るの好きなやついるぞ」
「そうなんですか?」
いるよな、と、パンキッシュくんが僕を見る。
「それ、執行部くんのこと?」
「そうそう。不定期に余った菓子貰うし」
お菓子作るのが好きというか、ほんとは、トラッドスクールちゃんが好きそう、ってとこから始まってるけど、今じゃ十分執行部くん自身も楽しんでるよね。
「執行部さんてそうなんだ」
ライトくんは少し驚きぎみだ。意外……といえば、意外なのかな。もはや僕たちにとっては当たり前のことになりつつあるけど。
「あと、菓子じゃないけど、特に和風料理は藍鉄が得意だよな。調理室といえば藍鉄と執行部、って感じ」
「そうなんですね。一度その二人とは話をしたい……かも」
ヘンゼルくんは目を輝かせているようにも見えた。これから調理室の常連になりそうだね。
「あっ、そーだ。調理室には大抵トリッカーもいるな。まだこっちには来てないけど、あいつは誰かが何か作ってると、絶対嗅ぎ付けてくるからな」
「……そういうパンキッシュくんは、何でそんなに調理室事情に詳しいの……」
生き生きと説明しているパンキッシュくんに聞いてみた。パンキッシュくんに料理の趣味なんて聞いたことないのに、大抵誰がいるなんてどうして知ってるんだろう。
「俺? 俺はあそこにレトルト常備してるから」
「……へえ」
何でレトルトなんか常備してるんだろ……知らなかったけど、そういえば、バッドボーイくんとのお近づきに、って釣ろうとしてたときもレトルトだったっけ……。
そんな話はそこまでにして、ヘンゼルくんに調理室の場所を伝えるのも兼ねて、僕達は一旦部屋に戻ることにした。