学校のある日には、〈れな〉を立ち上げる余裕はあまりなかったのだが、リンは自分の部屋に戻ってから、〈れな〉を立ち上げてみた。
《今日も一日お疲れさまでした!》
優しい文言に癒される。画面を見てみるが、特にタスクはないようである。
「休日しかタスク出ないのかな」
〈れな〉の操作も、実はよく分かっていない。休日にレンの自主練に付き合うときに、便乗しているだけだ。
リンは、欠黒象を相手に一人で歌ってみて、なんだかこのままではいけないような気がしてきていた。だから、〈れな〉を立ち上げてみたのだ。
いろいろ、画面を触ってみるが、お疲れさまの言葉を見る以外にできることはなさそうだ。画面がシンプルすぎるのだ。よく分からない、のもあるが。
「まあ、いいか……」
リンは、とりあえず端末の画面を消して、それからベッドに転がった。
レンの方の〈れな〉はどうなっているのだろう。レンのことだから、多分平日にもタスクがいろいろ出ていて、今頃自分の部屋でそれをこなしているのだろう。夕方帰ってごはんを食べてから、トイレやお風呂に行く以外では、レンはほとんど自分の部屋にこもっている。たまに聞こえてくるのを聞く限り、歌の練習をしているらしい。静かなら、宿題をやっている。
リンは、レンに起こしてもらうこともあるぐらいだし、レンが部屋に入ってくることにそこまで抵抗はない。でも、その逆をやることは、そういえばない。やろうとしたこともないというか、部屋に入ってはいけないような、そんな感覚がある。
なんでだったっけ、と思うが、真面目に練習や勉強をしているところに入る気にはなれない。もしリンがレンの部屋に突然入ったら、レンは怒る……ことまではしないと思うが、おそらくは嫌な顔をするだろう。
……レンとは、仲が悪いわけではない。ごはんだって一緒に食べるし、喋ったりする。きっと、年頃だから、なんとなく距離を感じることがあるぐらいで……。
「……宿題しよう」
歌の練習も大事だが、まずはある宿題をやらなければ。リンはベッドから起き上がって、宿題を始めた。