バスは学校のバス停を出た。部活のない生徒は少なく、乗り込んだのは数人だ。
横向きの座席に、女子生徒が二人、並んで座る。宿題の話とか、昨日見た動画の話とか、話題は次々と切り替わる。
そういえば、と、片方の女子生徒は鞄からファイルを取り出した。その中には、合唱の楽譜が入っている。
今日は吹奏楽部が音楽室を使う日だから、合唱部である二人は部活がない。明日の部活のために、楽譜を見ながら、二人は小さな声で歌を口ずさむ。
バス停につき、バスが停まった。二人の前に座っていた生徒が立ち上がる。
まだ降りるバス停ではないので、二人がそのまま楽譜を見ていると、その楽譜が急に上に引き抜かれた。
女子生徒はびっくりして顔を上げた。女子生徒の前には、さっき座席を立ったはずの……レンが、立っていた。
レンは、女子生徒の手から取り上げた楽譜を見つめる。女子生徒二人は、意味が分からないままレンを見る。レンは、眉間にしわを寄せると、両手で楽譜の上端を持った。
「くだらない……歌なんて」
レンは冷たい声でそう言うと、楽譜を真ん中から破いた。その切れ目から、黒い空間が広がった。