「リン、今大丈夫?」
電話に出てすぐ、ミクの声がした。
「はい、今は」
音楽室を見回しつつ、リンは答えた。
「今学校なんだよね?」
「はい、さっき音楽室に欠黒象が出て、ちょうど消し終わったところです」
「お疲れ様。今日ずっとだったよね」
「はい……」
心配そうなミクの声が沁みる。リンは、一旦グランドピアノの前の椅子に座った。
「さっき通知が来たんだけど、いつもリンたちが乗ってるバスの中で欠黒象が出たみたいなの」
「え?」
「この時間にアパート方面に向かってるバスみたいだけど……。リンはバスに乗ってないんだよね」
「は、はい、まだ学校ですし……」
リンは答えながら、ふと心配になった。当然、今日部活がなかった人たちが乗っているはずのバスだし、……早めに帰ると言っていたらしいレンも、乗っているかもしれない。……大丈夫、だろうか。
「私は、今からそのバスが大丈夫か見てくるね。リンは、また別の通知が来たら、そっちに行ってくれるかな」
「分かりました」
「よろしくね!」
電話は切れた。椅子に座ったまま、リンはしばらく、じっとしていた。今日一日、ずっと歌って走り回ったから、ミクがバスを見に行ってくれるのは助かる。ミクが言った通り、他に現れたら、リンが対処しなければならないし、今だけでもちゃんと休んだ方がいい。
――どうか、無事でありますように。リンは心の中で祈った。