世界の修復者と私のボイストレーナー〈番外編〉 (3)改善アンケート - 3/5

 リンたちがレッスン室に入ると、電子キーボードを弾いていたレンが、その手を止めた。
「ただいま、レン!」
「……おかえり」
 レンは言ってから、リンの横でにこにこしている〈れな〉を見て、少し嫌そうな顔をした。
「練習は思う存分できましたか?」
「おかげさまで」
 〈れな〉の問いには、不機嫌さを丸出しにして答える。そして、レンは立ち上がって、リンの方へ近づいてきた。
「アンケート終わったんだろ。リン、練習始めるか」
「待ってください」
 レンの手を、〈れな〉が握る。
「面談と言ったでしょう? 今度はあなたと話す番です」
「アンケートならリンだけでいいだろ、なんで……」
「あ、リンさん。しばらくこの自動生成プログラムには用事がありますので、二人で席を外しますね」
 レンの言うことは無視して、〈れな〉は話を進める。
「え、練習、……」
 アンケートが終わったら歌の練習をする、とレンに言ってあったので、リンは戸惑う。しかし、そんなリンを見て、〈れな〉は首を横に振って見せた。
「リンさん、彼がいないときが休むチャンスですよ。どうせ、これから私が面談をしても、それが終わったら練習に付き合わせる気でしょう」
「お前、付き合わせるってそんな言い方――」
「あなたは黙っていてくださいますか?」
 衝突する〈れな〉とレンに、リンは萎縮する。
「安心してください。面談は昼食までには終わるようにいたしますので。どうしても練習がしたいのであれば、午後からにしてください。分かりましたか」
 仕切る〈れな〉に、レンはどうも口答えができなくなったようで、静かになった。
「リンさん、アパートの彼の部屋で面談をしようと思いますので、一旦帰りますね。午前の間はご自由にお過ごしください」
「は、はい、……」
 〈れな〉に言われて、リンはおそるおそるうなずいた。
「ということですので。行きますよ」
 〈れな〉に引っ張られ、レンは少し反抗する。
「別に、休んでてもいいけど、やることなかったら、それ、あるから」
 レンは、電子キーボードの方を指さす。そして、〈れな〉に力強く引きずられる。二人はレッスン室の外へ出て、ドアは閉まった。
 リンは、レンが指さした電子キーボードの前に座った。台に置かれている楽譜を見てみる。
「……新しい曲……かな」
 見覚えのない歌詞が書かれている。メロディーを弾いてみるが、今までの練習でやったことのない曲のようだ。リンは、声を出し、音を取ってみることにした。